「地域のことを考えた宿に泊まりたい」という気持ちは、旅の選択肢を増やすようで、実際には絞り込みをむずかしくすることもあります。北海道でも、農業・自然保護・先住民文化など、それぞれの軸で地域に関わりながら運営している小規模な宿がいくつかあります。
ただ、「地域貢献」という言葉は幅が広く、取り組みの実態が外からは見えにくいところも多い。この記事では、各施設の公式サイトで直接確認できた情報だけをもとに整理しています。確認できていない項目はその旨を明記しました。
5施設の特徴はかなり異なります。野生動物との共生、オフグリッドの暮らし、アイヌ文化への関与。どの軸を旅のテーマにするかで、向く施設は変わってきます。この記事が、そのための材料になれば幸いです。
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編集部の選定基準
以下の6つの視点をもとに施設を絞り込みました。あくまで「公式情報として確認できたかどうか」が基準です。掲載されていない施設が取り組みをしていないわけではありません。
- 地元主体の運営 オーナー・経営者の地域密着性、地域住民の意思決定への関与
- 地元雇用と人材育成 スタッフの地域性、管理職への地元人材登用、キャリア支援の有無
- 地元調達・地元事業者との連携 食材・備品・体験サービスにおける地産地消の実践
- 地域課題への取り組み 農業・環境・文化継承など、地域固有の課題への実質的な関与
- 文化・自然・生活の尊重 地域の文化や生態系を消費対象として乱用せず、住民が望む形で運営されているか
- 環境への配慮 省エネ・廃棄物削減・自然資源の保全など、具体的な取り組みの有無
対象は客室数30室以下の小規模施設に限定しています。掲載情報は2026年5月時点で各施設の公式サイトをもとに確認したものです。
施設紹介
1. Auberge erba stella(オーベルジュ エルバ ステラ)
場所|空知郡中富良野町
全3室、個人経営のオーベルジュです。オーナー夫妻はともに野菜ソムリエプロの資格を持ち、自ら畑を耕しながら宿を運営しています。
サステナブルな取り組み(公式情報に基づく)
食まわりの情報開示が7施設のなかで最も充実しています。自家菜園では農薬・肥料を使わない自然栽培に準じた方法で100種類以上の野菜とハーブを育てており、食材はこの菜園のものを中心に、オーガニックのものや北海道内の質の高い生産者から調達するという方針が公式サイトに書かれています。
食の方針についても丁寧に説明されていて、動物性食品を使わないプラントベースの食、生きものへの搾取を可能な限り減らすという考え方、そして「自然共生型農業を応援し、汚れのない持続可能な大地を未来に繋げる」という言葉が掲載されています。アメニティも製造・使用時の環境負荷が少ないものを選んでいると記されています。
野菜料理に特化した国際的なレストランガイド「We’re Smart Green Guide」で4ラディッシュを獲得していることも、公式サイトで案内されています。
この施設が向いている可能性がある人
食の倫理や自然栽培への関心が旅の動機になっている方。プラントベースの食をじっくり体験したい方。施設の姿勢を事前にしっかり調べてから選びたい方。
注意点・合わない可能性
全3室のため、希望の時期に予約が取れないこともあります。動物性食品を中心とした食事を希望する場合は、この宿の方針と合わないかもしれません。地元雇用やスタッフ構成については公式サイトに記載がありません。
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一休で詳しく見る2. ウィルダネスロッジ・ヒッコリーウィンド
場所|阿寒郡鶴居村
釧路湿原国立公園のほとりの森に建つロッジです。オーナーは安藤誠氏で、国際的に活動するネイチャーガイドとして知られ、宿とガイド業を一体で行っています。
サステナブルな取り組み(公式情報に基づく)
安藤氏は北海道フードマイスターの資格を持ち、スローフードフレンズ北海道の会員でもあります。公式サイトには「北海道やアラスカの自然と人々の魅力を、日常の奇跡というテーマで伝えている」という言葉があり、世代を超えた学びの場を目指していることが書かれています。
環境活動では、クマなどの大型野生動物が棲む奥山の水源林の再生に取り組む「日本熊森協会」の顧問を務めていることが公式サイトに記載されています。野生動物と人の軋轢を減らす活動への関与にも触れられています。
この施設が向いている可能性がある人
北海道の大型野生動物や生態系への関心が旅の軸にある方。ガイドとの対話を通じて自然環境について深く考えたい方。釧路湿原周辺を拠点に過ごしたい方。
注意点・合わない可能性
客室数は公式サイトに記載がありません。料理担当スタッフの詳細や、タンチョウ保護活動への直接的な関与については公式サイトでは確認できていません。予約前に公式サイトで最新情報を確認してください。
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3. ゲストハウス二風谷 ヤント
場所|沙流郡平取町二風谷
沙流川流域のアイヌ文化の拠点として知られる二風谷にあるゲストハウスです。オーナーは萱野公裕氏で、公式サイトにはアイヌ文化を受け継ぐ活動への関与が記されています。
サステナブルな取り組み(公式情報に基づく)
「沙流川流域のアイヌ文化を受け継ぐ一人となるべく活動しています」という言葉が公式サイトに掲載されており、二風谷に滞在するゲストにアイヌ文化を感じてほしいという考えが示されています。旅行者どうし、また旅行者と地域住民をつなぐ場を目指しているとも書かれています。
この施設が向いている可能性がある人
アイヌ文化を身近に感じることを旅の目的にしている方。二風谷という場所の文脈を知ったうえで滞在したい方。地域住民との交流を旅の一部にしたい方。
注意点・合わない可能性
チプサンケ(チㇷ゚サンケ)などの地域行事への関与や、アイヌ文化博物館との連携については公式サイトに記載がありません。客室数も未掲載です。環境配慮についての記述も確認できていません。
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4. オフグリッドゲストハウス GURUGULU
場所|虻田郡倶知安町富士見
羊蹄山のふもとの森にあるゲストハウスです。「森の暮らし体験宿」「off-grid guest house in the forest of Mt.Yotei」という言葉が公式サイトに掲載されています。
サステナブルな取り組み(公式情報に基づく)
施設名と公式サイトの説明からオフグリッドの宿であることは伝わりますが、電力・水・廃棄物の処理方法など具体的な運用については公式サイトに詳細な記載がありません。羊蹄山を望む森のなかという立地と、森の暮らしを体験できる宿というコンセプトが公式サイトの中心にあります。
この施設が向いている可能性がある人
通常のインフラに依存しない暮らしの実際に関心がある方。ニセコ・羊蹄山エリアの自然のなかでシンプルに過ごしたい方。宿泊を通じて暮らし方を考えてみたい方。
注意点・合わない可能性
太陽光発電・雨水利用・コンポストなど具体的な設備の詳細、オーナーが自ら建築したという経緯、パーマカルチャーに基づいた運営、見学会・研修の受入れについては公式サイトに記載がありません。客室数や料金も同様のため、直接公式サイトでご確認ください。
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5. THE GEEK
場所|川上郡標茶町(釧路湿原国立公園近接)
釧路湿原を目の前に望む立地のサウナ・宿泊施設です。湿原の景観と自然の音・静寂を体験の中心に据えているという説明が公式サイトに掲載されています。
サステナブルな取り組み(公式情報に基づく)
地元の食材を使ったメニューについての案内が公式サイトにあります。ただし仕入れ先や食材の詳細は記載がなく、どの程度地域調達が実践されているかは公式サイトからは読み取れません。釧路湿原国立公園に隣接するという立地の性格そのものが、この宿の核にあります。
この施設が向いている可能性がある人
釧路湿原の自然を間近に感じながら過ごしたい方。サウナと北海道の大自然を組み合わせた滞在を探している方。標茶・釧路湿原エリアを旅の拠点にしたい方。
注意点・合わない可能性
オーナー名、客室数、所在地の詳細については公式サイトに記載がありません。厚岸ウイスキーや地元クラフトビールの提供、地域DMOとの連携実績、テレビ不設置の設計方針、環境配慮の詳細なども同様です。気になる点は予約前に公式サイトか施設へ直接お問い合わせください。
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補足|この記事を読んだあとに確認してほしいこと
7施設はすべて、公式サイトへの直接アクセスによる確認を経て掲載しています。ただし、施設によって公式サイトに開示されている情報の量にはかなり差がありました。
「確認できていません」と書いた項目は、執筆時点で公式サイトから確認が取れていないというだけのことです。他の情報源でそれらの取り組みに触れているものもありますが、エコ哲学では公式情報として確認できた内容のみを使用しています。実際に取り組みが行われている可能性を否定するものではありません。
宿泊料金・プラン・客室数・予約方法は変わります。予約前に必ず各施設の公式サイトで確認してください。地元調達や地域雇用の実態について詳しく知りたい場合は、施設への直接問い合わせが確実です。
掲載していない施設でも、地域に根ざした運営をしているところはほかにも多くあるはずです。掲載されていないことそのものに意味はありません。
まとめ|あなたの「関わり方」はどこにありますか?
今回の5施設、それぞれの地域との関わり方はかなり異なります。
食と農業の一体性を最も丁寧に開示しているのがAuberge erba stellaです。野生動物との共生と水源林の再生を運営の軸に据えているのがヒッコリーウィンド。アイヌ文化を受け継ぐ活動への関与を表明しているのが二風谷ヤントです。オフグリッドの森の宿がGURUGULU、湿原の静寂と地元食材を組み合わせているのがTHE GEEKです。
「どの関わり方を、自分は旅に求めているか」という問いは、施設を選ぶ前に、旅そのものの目的を問い直すことでもあります。
掲載情報は各施設の公式サイトに基づき、2026年5月時点で確認できた内容を記載しています。情報は予告なく変更される場合があります。最新情報は各施設の公式サイトでご確認ください。








