「サステナブルなキャンプ場に泊まりたい」という言葉を、アウトドアメディアや旅行サイトで見かける機会が増えました。東京近郊でも、環境への取り組みや地域との関係性を公式に発信する施設が少しずつ現れています。
ただ、「自然の中にあるキャンプ場」はどこも「サステナブル」に見えやすいという難しさがあります。景観の豊かさと、運営の実態としての環境負荷は、必ずしも一致しません。認証を取得しているところもあれば、方針を自己申告しているだけのところもあって、何を根拠に選べばいいか迷うのが正直なところです。
この記事では、各施設の公式サイトで確認できた情報だけを整理しています。施設の優劣を判断するものではなく、「自分のキャンプの目的に合うかどうか」を考えるための材料として読んでもらえると幸いです。どれも選ばないという結論だって、もちろんあります。
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編集部の選定基準
掲載されていない施設が取り組みをしていないわけではありません。「公式情報として確認できたかどうか」を一貫した基準にしています。
- 第三者認証の取得状況 GSTC(グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会)の認証プログラム、またはそれに準拠した評価制度を取得し、公式に公表していること
- 情報開示の透明性 「サステナブル」と表現する際に、認証名・評価内容・具体的な取り組みの根拠を公式サイトで確認できること
- 資源管理・環境施策の方針 エネルギー・廃棄物・水・化学物質の使用について、具体的な施策が明示されていること
- 地域や調達先への配慮 地元調達、地域雇用、地域経済への貢献など、社会・経済面での取り組みが公開されていること
掲載情報は2026年5月時点で確認できた一次情報(公式サイト・会社公式ページ)に基づいています。
施設紹介
1. 農園リゾート THE FARM
場所|千葉県香取市西田部・東関東自動車道「大栄IC」から約15分
施設の特徴
千葉県北部の農園地帯に広がる複合型アウトドアリゾートです。グランピング・コテージ・キャンプサイトのほか、JGAP認証を取得した貸農園、レストラン、天然温泉を備えます。もともとは耕作放棄地だった土地の再生から始まった施設で、農業・自然・宿泊を切り離さずに運営しているところが特徴です。
サステナブルな取り組み(公式情報に基づく)
公式のSDGsページに取り組みの根拠が詳しく記載されており、この記事で紹介する3施設のなかで情報開示の量が最も多い施設です。
認証については、GSTCが策定する持続可能な観光の国際基準に基づき、GSTCが認定した第三者機関による審査を経てGSTC認証を取得しています。公式サイトには「日本国内のグランピング施設として初めて」と記載されており、認定証明書も公開されています。なお、この「初めて」という表現はTHE FARM自身の公式表記によるもので、「グランピング」の定義次第で他施設との横断比較は難しい面があります。
電力は2023年から千葉県銚子市の風力発電所由来のものに切り替えており、公式には滞在中に使う電気の大半が自然エネルギー由来となると説明されています。場内にはEV充電設備も16基設置されています。
地域との連携では、地元の社会福祉法人や清掃工場と組んで間伐材や倒木を薪として調達しています。農福連携の仕組みです。貸農園はJGAP認証農場として登録済みで、食品安全・環境保全・労働安全の各基準を満たしていることが公式に確認できます。
廃棄物削減については、プラスチック製の歯ブラシを竹製に切り替え、ペットボトルの飲料水を紙素材の「ハバリーズ」に変えています。BBQ用の炭はヤシ殻の再利用品、ストローは天然大麦由来で土中約3ヶ月で分解するものを使用。自然由来の素材への置き換えを複数同時に進めている印象です。生態系保全では、ニホンアカガエルの生息調査と「ホタル恋プロジェクト」による生息地復元を継続しています。
環境保護基金「CAJ(コンサベーション・アライアンス・ジャパン)」にも2019年から加盟しており、事業で得た利益の一部を自然保護団体に寄付しています。
向いている人
GSTC認証という国際基準での第三者評価を宿泊選びの根拠にしたい方。農業・自然・食を組み合わせた滞在を求める方。EV利用で訪れる方。千葉県北部・九十九里方面を拠点にしたい方。
注意点
電力の再エネ比率は「大半」とされているものの、具体的な数値は公式に掲載されていません。水使用量・廃棄物量・CO2排出量などの定期的な開示も、公式サイト上では確認できていません。確認できた定量情報はEV充電設備16基という設備数のみです。
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Ozmallで詳しく見る2. 北軽井沢スウィートグラス
場所|群馬県吾妻郡長野原町・上信越自動車道「碓氷軽井沢IC」から約40分
施設の特徴
浅間山北麓に位置するキャンプ場です。運営母体は有限会社きたもっく。1994年、荒涼とした火山地帯に木を1本ずつ植えることから始まり、現在は多様なキャビン・コテージ・テントサイトを持つ森林型の施設に育っています。キャンプ場を軸に、薪の生産販売・養蜂・宿泊型ミーティング施設(TAKIVIVA)など複数の事業を地域で展開しています。
サステナブルな取り組み(公式情報に基づく)
きたもっくの特徴は、林業がキャンプ場の運営と切り離されていない点です。2019年に群馬・長野の県境にある3山にまたがる240haの山林「二度上山」を取得。2015年から始めた薪の生産販売事業「あさまの薪」により、場内で使う薪を自給しています。伐採した木材は薪だけでなく建築材や家具材にも使われており、施設から車で5分ほどの場所に木材加工工場もあります。
地域経済への関与は複数の公的機関が評価しています。経済産業省「地域未来牽引企業」(2020年)、農林水産省「ディスカバー農山漁村の宝 関東ブロック」(2020年)、林野庁「森林サービス産業推進地域」(2020年)、農林水産省「6次産業化アワード 食料産業局長賞」(2021年)。これらはきたもっく公式会社概要ページの年表で確認できます。
養蜂事業として自家採蜜の生はちみつ「百蜜(ももみつ)」を2019年から販売しています。広葉樹林と蜜蜂という組み合わせは、事業設計そのものに生態系との共存という視点があることを示しています。企業理念「ルオム(自然に従う)」と「The Future is in nature.」は公式サイトで確認できます。
向いている人
キャンプ場の運営が林業・地域経済と結びついている施設を求める方。薪の使用を通じて地域の資源循環に関わりたい方。群馬・長野原エリアの森林環境を長期的に支える取り組みに関心がある方。
注意点
施設単体としての環境マネジメント、たとえばエネルギー使用量・廃棄物量・節水設備の詳細は公式サイトでは確認できませんでした。GSTC認証やGreen Keyといった宿泊施設向けの国際認証の取得も、今回の調査では確認できていません。農林水産省・経済産業省・林野庁の各認定は地域経済・林業経営・6次産業化の文脈での評価であり、宿泊施設としての環境負荷の評価とは軸が異なります。その違いを念頭に置いたうえで参照することを勧めます。
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3. 無印良品 カンパーニャ嬬恋キャンプ場
場所|群馬県吾妻郡嬬恋村・上信越自動車道「碓氷軽井沢IC」から約50分
施設の特徴
標高1,300mのバラギ高原に位置する、良品計画が管理運営するキャンプ場です。浅間山・四阿山・草津白根山の三山を望む高原の地形を活かした広大なサイトが特徴。テントサイトに加え、「家具の家」「無印良品の小屋」「インフラゼロハウス」などの宿泊棟も選べます。バラギ湖でのカヌー・釣り・冬のわかさぎ釣りなど、湖畔を使ったアクティビティも展開しています。
サステナブルな取り組み(公式情報に基づく)
この施設で確認できた情報は認証や数値の開示ではなく、利用ルールに組み込まれた環境配慮です。公式注意事項ページ(camp.muji.com/notes/precaution/)に基づいて紹介します。
まずゴミについて。場内にゴミ箱は置かれておらず、公式注意事項には「ゴミ箱は、ご用意していません」と明記されています。生ゴミも含め、利用者が各自で処理・持ち帰る仕組みです。廃棄物を出さないことそのものを利用者に委ねる、引き算の設計といえます。
洗剤については、石けんや植物由来と表示されているものの使用を求めています。合成洗剤の使用を禁じるのではなく推奨という形ですが、高原の水資源への配慮が利用規約に織り込まれています。
直火は禁止で、焚き火は自分の焚き火台の上でのみ可能。駐停車時のアイドリング停止も求めており、自然環境保護を理由に明記しています。
施設設計のコンセプトとして「自然の起伏はできるだけ活かし、環境破壊に結びつくような設備はつくらない」という表現も公式に確認できます。
向いている人
環境配慮が利用ルールとして明文化されている施設を求める方。「設備を足すのではなく引く」という設計思想のキャンプ場を探している方。高原の気候と景観を重視する方。レンタル設備が充実しているため、道具なしで訪れたい方にも向いています。
注意点
SDGs・サステナビリティの専用ページや、エネルギー・廃棄物の定量的な開示は公式サイト上では確認できませんでした。GSTC・Green Keyなどの第三者認証の取得も今回の調査では確認できていません。確認できた情報は利用ルールと施設コンセプトの表現に限られており、運営全体の環境マネジメント体制は公式情報からは判断できない部分があります。良品計画グループとしての環境・ESG方針は、グループ公式サイトで別途確認することを勧めます。なお、この利用ルールは嬬恋・津南・南乗鞍の全施設共通の注意事項として掲載されており、嬬恋固有の取り組みとの区別は現在の公式サイトからは判断しにくい状況です。
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補足|この記事を読んだあとに確認してほしいこと
GSTC認証については、GSTCが直接施設を認証するのではなく、GSTCが認定した第三者機関が審査する仕組みです。THE FARMの公式ページでは認定証明書が公開されており、認証の根拠を直接確認できます。
きたもっくが取得している各種認定は宿泊施設の認証ではなく、地域経済・林業経営・6次産業化の文脈での評価です。どちらも公的機関による評価という点は同じですが、評価の軸は異なります。
この記事に掲載していない施設は、今回の調査で公式情報が取得できなかったか、確認できた情報が不十分だったためです。掲載の有無が施設の取り組みの有無を意味するものではありません。
さいごに
3施設が公式情報として発信している内容は、それぞれ方向が違います。
THE FARMは認証と開示の量という点で抜けており、GSTC認証の取得からエネルギー・廃棄物・農業・生態系にわたる取り組みまで公式サイトで一通り確認できます。北軽井沢スウィートグラスは林業・薪・養蜂という地域の資源循環がキャンプ場の運営と一体になっており、複数の公的機関からの評価も裏づけになっています。無印良品 カンパーニャ嬬恋は認証や数値ではなく、ゴミ箱を置かない・直火を禁じる・洗剤を選ぶという利用ルールの設計に、環境への姿勢が表れています。
キャンプ場のサステナビリティを何で測るか。認証、数値、地域との関係、利用者へのルール。どの軸を重視するかによって、「選ぶ理由」は変わります。自然の中で過ごすことそのものが環境負荷を伴う以上、その問いは今後もしばらく更新され続けるのかもしれません。








