ファンデーションを選ぶとき、わたしはかなり長い間、「いい成分のものを使えば、それで十分だ」と思っていました。
けれどある時期から、そこに別の問いが混じりはじめました。天然由来とはどのように定義されているのか。成分表に「オーガニック」と並ぶ一方で、製造過程や原料調達についてはどうか。いい素材を使うことと、全体として環境に対して誠実であることは、まだ別の話ではないか、と。
この記事は、ナチュラグラッセのメイクアップ クリーム モイストを、そういった問いの視点から検証するものです。製品の機能や仕上がりについては後述しますが、まず確認したかったのは、このブランドが何を語り、何を語っていないか、という点でした。
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クイックサマリー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | ナチュラグラッセ メイクアップ クリーム モイスト |
| メーカー | 株式会社ネイチャーズウェイ(名古屋本社・愛知県内自社工場) |
| 内容量 | 30g(全3色) |
| 価格 | ¥3,850(税込) |
| SPF | SPF50+ PA+++ |
| 購入先 | ネイチャーズウェイ公式オンラインショップ、自社直営店舗 |
| 第三者認証 | 製品単体では確認できず(原料・農場レベルの認証は別途存在) |
エコ哲学 6軸評価
| 評価軸 | 評価 | 概要 |
|---|---|---|
| ①不要な消費の回避 | ★★★★☆ | 1本でスキンケア・UV・メイクを兼用。石けんで落とせる設計 |
| ②耐久性・修理可能性 | ★★☆☆☆ | 詰め替え・リフィル設定なし。使用量の目安も非公開 |
| ③環境配慮素材 | ★★★☆☆ | 天然由来100%・9フリー処方。一方、国際規格との対応関係は明示なし |
| ④労働倫理 | ★★★☆☆ | 国内製造・自社農場あり。原料サプライチェーンの開示は限定的 |
| ⑤地域ビジネス支援 | ★★★★☆ | 1974年創業の国内メーカー。自社農場は山梨県北杜市 |
| ⑥透明性・グリーンウォッシング警戒 | ★★☆☆☆ | 「天然由来100%」の算定基準・国際規格との対応関係が明示されていない |
総合:★★★☆☆(3.0/5.0) 「問いながら使う価値がある製品」
ブランド背景と透明性の調査
ネイチャーズウェイとはどんな会社か
株式会社ネイチャーズウェイは1974年、名古屋を拠点として創業しました。日本で最初にナチュラル・オーガニックコスメの輸入・販売を手がけた企業とされており、ヴェレダやDr.ブロナーズの国内正規輸入代理店としても知られています。自社開発ブランドとして「ナチュラグラッセ」「チャントアチャーム」を展開し、製造は愛知県内の自社工場で行っています(詳細な製造拠点の内訳は非公開)。
さらに、山梨県北杜市には有機JAS認証を取得した自社農場を保有。そこで育てたハーブを原料として製品に配合しているという点は、「自社農場を持つ化粧品メーカー」として一定の透明性を示しています。
2020年には「ネイチャーズウェイサステナブルプログラム」を策定し、サーキュラーエコノミー・カーボンニュートラル・笑顔の共創という3つのゴールを掲げています。テラサイクル社とのパートナーシップのもと、使用済み容器の自社回収プログラムも実施しています。また、JaSPON(持続可能なパーム油ネットワーク)にも加盟しており、2030年までにパーム油由来原料をRSPO認証品に全面移行するという目標を公表しています。
これらは、単なる「自然派コスメ」のマーケティングを超えた、長期的な取り組みとして評価できます。
ブランドが言っていること、言っていないこと
メイクアップ クリーム モイストの公式ページには「天然由来成分100%」「9フリー処方」「ノンナノ処方」という表記があります。石けんで落とせる設計は、専用クレンジングを不要とする可能性があり、不要な消費の抑制に間接的に貢献します(ただし使用量や重ね方によってはクレンジングが必要になる場合もあります)。
一方、以下の情報は公式サイト上では確認できませんでした。
- 「天然由来成分100%」の具体的な算定基準や国際規格(COSMOS・ISO 16128等)との対応関係
- 製品単体としての第三者認証(COSMOS、Ecocert、NATRUEなど)
- 成分ごとの原料産地・調達経路の詳細
- 製品容器のTerraCycle回収プログラム対象品目かどうか
- ライフサイクルアセスメント(LCA)データ
「天然由来成分100%」という表記は、消費者に強い印象を与えます。ただし、この表現の算定基準と国際規格との対応関係が明示されていないとき、表記の意味は独立して検証することができません。ブランド独自の基準が存在している可能性は十分ありますが、COSMOS等の外部規格との照合ができない現状は、この製品固有の問題ではなく、日本の化粧品業界全体に共通する課題でもあります。
実際の使用感・テクスチャーについて
まず、手に取ったときの印象から。テクスチャーはさらさらとした感触で、肌にのせると自然に馴染んでいく感覚があります。「塗っている」というより「整えている」に近い。
日焼け止めとファンデーションを別々に用意しなくていい、という点がわたしにとっては大きかったです。朝の支度がひとつ減る。それだけのことですが、積み重なると気持ちの余裕が違います。
カバー力については、正直なところ強くはありません。ニキビ跡や目立つシミをしっかり隠したい日には、コンシーラーを併用するのが現実的だと感じました。ただ、その分「素肌らしさ」は残ります。ナチュラルな仕上がりが好みの方には、むしろこのくらいがちょうどいいかもしれません。
毎日使い続けても、肌が荒れたり重くなったりする感覚がないのは、使っていて安心できる点です。「負担をかけていない」という感覚は、使い続けるうえでじわじわと効いてきます。
石けんで落とせる設計は、思っていた以上に快適でした。クレンジングでゴシゴシとこすらなくていい。それだけで洗顔後の肌のひきつり感が変わりました。
香りは、合成香料特有の人工的な甘さとは異なる、おだやかな印象。わたし自身は気になりませんでしたが、香りへの感度には個人差があるので、敏感な方は店頭などで試してみるのが安心だと思います。
6つの基準で評価する
① 不要な消費の回避
メイクアップ クリーム モイストは、下地・ファンデーション・日焼け止め・スキンケアを1本で担う設計です。「スキンケアのつぎに日焼け止め、そのうえにファンデーション」という多層的なルーティンを一工程に集約できるとすれば、これは製品の数を減らすという意味での消費の簡素化に貢献します。必要なものだけを、必要なだけ。その感覚を日常の中で実現しやすくしてくれる設計だと思います。
さらに石けんで落とせる設計は、専用クレンジング製品が不要になる可能性を持ちます。クレンジング1本をなくすことは、容器廃棄・成分負荷の両面から意味があります。
② 耐久性・修理可能性
化粧品における「耐久性」は、主に使用可能期間(使い切るまでの日数)と容器の再利用性に集約されます。
30gという容量から1使用あたりの使用量を逆算すると、2〜3ヶ月程度の使用が目安として見込まれますが、公式の使用量目安は掲載されていません。
現時点では詰め替え用(リフィル)の設定は確認できていません。容器素材の表記も見当たらず、TerraCycle回収の対象品目かどうかも公式サイト上からは判断できませんでした。この点は問い合わせで確認できる可能性があります。
「自然からの原料を使用しているため、分離することがあります」という注記がある点は興味深い透明性です。天然処方であることの正直な開示と見ることができます。
③ 環境配慮素材
9フリー処方には「石油系界面活性剤・鉱物油・タール系色素・合成香料・パラベン・シリコン・紫外線吸収剤」などが含まれますが、その具体的な構成は製品ページの表記に準拠する必要があり、本記事ではすべての項目を断定的には列挙しません。またノンナノ処方であることが特徴とされています(公式表記に基づく)。
配合成分には*マークでオーガニック成分が識別されており、自社農場の有機JAS認証ハーブが一部含まれています。ブランド共通成分である「ベースオイルmix」(オリーブ果実油、ホホバ種子油、サジー果実油)は植物由来。合成香料を使わず、エッセンシャルオイルのブレンドで香り付けしている点も一定の配慮が見えます。
一方、COSMOS・EcocertなどのオーガニックコスメやNATRUEに代表される第三者認証の記載は、現時点の公式ページ上では確認できていません。製品単体の「天然由来100%」という表記が何を根拠にしているか、国際規格との対応関係が明示されない以上、この評価は留保せざるを得ません。
④ 労働倫理
愛知県内の自社工場での国内製造という事実は、少なくとも日本の労働法規が適用される環境での製造を意味します。山梨県北杜市の自社農場では、原料栽培の一部を自社管理しており、農場レベルでのトレーサビリティは相対的に高いと言えます。
ただし、成分表に並ぶ多様な植物原料の産地や調達先については、公開情報の範囲では確認できませんでした。RSPOへの言及とJaSPON加盟はサプライチェーンへの意識を示すものですが、現時点での調達状況の透明性という点ではまだ途上にあります。
⑤ 地域ビジネス支援
1974年の創業から50年以上、名古屋を本拠地に国内製造を続けてきたメーカー。日本のオーガニックコスメ市場の黎明期から関わり、業界の土台づくりに貢献してきた歴史は、単なる「国産」以上の文脈を持っています。
自社農場を山梨県北杜市に置き、地域農業と結びついた原料調達を行っている点も、地域経済との連続性という観点から評価できます。
⑥ 透明性とグリーンウォッシングへの警戒
「天然由来成分100%」「地球と肌にやさしい」という訴求は、製品説明の中核をなしています。パーム油原料のRSPO移行目標を明示していること、TerraCycle回収を実施していること。これらはグリーンウォッシングへの自覚的な抵抗と読むこともできます。
同時に、「天然由来100%」という表記の具体的な算定基準や、COSMOS等の国際規格との対応関係が明示されていないことは、この表記を消費者が独立して検証する手段がないことを意味します。製品単体の第三者認証が取得されていない点も同様です(原料・農場レベルの認証は別途存在します)。
EUのグリーンクレーム指令(2024年)が問題としているのは、こうした「検証不可能な環境主張」です。日本ではまだ同等の規制は存在しません。それは製品を否定する理由にはなりませんが、ラベルを出発点として立ち止まるための理由にはなります。
メリット・デメリット
確認できる強み
- 下地・日焼け止め・スキンケア・ファンデーションを1本に集約。製品数を減らせる可能性
- 石けんで落とせる設計(使用量や重ね方によっては別途クレンジングが必要な場合もあり)
- 9フリー処方、ノンナノ処方(公式表記に基づく)
- 天然香料(エッセンシャルオイルブレンド)使用
- カバー力は控えめだが、素肌らしいナチュラルな仕上がり
- 毎日の使用でも肌への負担を感じにくい
- 1974年創業の国内メーカーによる、愛知県内での自社製造
- 有機JAS認証農場(山梨県北杜市)由来の原料配合
- RSPOへの移行目標(2030年)を公表
- TerraCycle連携による使用済み容器回収プログラムを実施
確認しておきたいこと
- 「天然由来成分100%」の算定基準・国際規格(COSMOS等)との対応関係が明示されていない
- 製品単体としての第三者認証(COSMOS等)は確認できない
- カバー力は高くないため、コンシーラーの併用が現実的な場面もある
- 詰め替えリフィルの設定なし(現時点)
- 1使用あたりの目安量が記載されておらず、消費量を見積もりにくい
- パーム油由来原料のRSPO切り替えは2030年目標であり、現在進行中
- TerraCycle回収の対象品目として本商品が含まれるかどうかは要確認
- 香り(エッセンシャルオイル由来)が苦手な方は注意が必要
さいごに
ナチュラグラッセ メイクアップ クリーム モイストは、日本のオーガニックコスメ市場のパイオニアが、半世紀の蓄積の上に作った製品です。国内製造、自社農場、TerraCycle回収、RSPO移行目標。これらは、企業として長期的な視点を持とうとする姿勢の表れとして読むことができます。
ただ一点、「天然由来成分100%」という言葉は、その算定基準次第で意味が大きく変わります。消費者として確認できる国際規格との対応関係がない以上、この表記はひとつの出発点として受け取るのが誠実だと感じます。
もうひとつ、この製品の静かな利点として挙げたいのは、「持つものを増やさなくていい」という感覚です。新しいコスメを試すたびに増えていく容器の数を、一本に集約することで減らしていける。それは、消費を減らすための難しい決断ではなく、日々の選択の自然な結果として起きることです。
そしてもうひとつ、わたしがこの製品を選ぶ理由として挙げたいのが、国内製造という点です。海外から輸入されたナチュラルコスメも多い中、愛知県内の自社工場で製造されているという事実は、輸送距離による環境負荷の観点からも、製造過程への信頼という観点からも、ひとつの判断材料になります。「どこで作られたか」は、「何が入っているか」と同じくらい、選ぶ理由になりうる。
編集注・参照情報
本記事は公式サイト等の公開情報および実際の使用体験に基づいて執筆しました。
参照:
- ネイチャーズウェイ 公式ショップ商品ページ
- ネイチャーズウェイ サステナビリティ(コミットメント)
- ネイチャーズウェイ リサイクルプログラム
- ネイチャーズウェイ 環境負荷低減・RSPO取り組み
- JaSPON(持続可能なパーム油ネットワーク)会員一覧
- EU Green Claims Directive(2024年)
- 有機JAS認証(農林水産省)








