「アニマルウェルフェア対応」「平飼い」「放牧」。スーパーの棚にも、こうした表示を見かける機会が増えました。でも、その表示がどんな飼育環境を指しているのか、第三者による確認を経ているのか、それとも生産者の自己申告なのか。パッケージを見ただけではわからないことがほとんどです。
この記事では、日本で購入できる卵・乳製品を対象に、飼育環境・認証・表示の透明性まで、公式サイトや行政機関の公開情報だけをもとに8点を紹介します。確認できなかった項目は、そのまま「確認できず」と書いています。
まず知っておきたい:選定基準
以下の6つの視点をもとに商品を調べました。「公式情報で確認できたかどうか」が基準であり、掲載されていない商品や生産者がこうした取り組みをしていないわけではありません。
- 飼育環境 ケージの有無、飼養密度、屋外アクセスなど、動物本来の行動ができる設計になっているか。
- 苦痛の低減 疾病・けが・過密・熱ストレスなどを減らす管理が行われているか。
- 行動の発現 採食・休息・移動・砂浴びなど、種本来の行動ができる環境か。
- 輸送・と畜の扱い 生産工程だけでなく、輸送・と畜時の取り扱いまで配慮されているか。
- 認証・第三者保証 「アニマルウェルフェアに配慮している」という主張が、第三者機関の認証によって裏付けられているか(自己申告のみかどうか)。
- 表示の透明性 「平飼い」「放牧」などの表示について、その定義や範囲が公式に説明されているか。
掲載情報は2026年7月時点で確認した一次情報(各生産者の公式サイト、山梨県・農林水産省などの行政公開情報)がもとになっています。生産者自身のサイトと行政の認証リストの間で食い違いが見つかったケースもあり、その場合はどちらを根拠にしたかを本文中に書いています。なお「輸送・と畜の扱い」は、今回の9点の中では具体的に触れている一次情報が見当たりませんでした。この基準については、以下の紹介では扱っていません。
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卵編
1. オーガニック平飼い有精卵(小林農園/テンアール株式会社)
🥚 有機JAS認証(2022年取得・認証団体ACCIS) 📏 飼育密度0.41〜0.55㎡/羽(基準0.15㎡を上回る) 🌳 放牧場1.75㎡/羽(基準0.15㎡) 🤝 WFCJ・アニマルウェルフェア畜産協会に生産者会員として加入
北海道勇払郡厚真町にある養鶏場です。一部の鶏舎で2022年に有機JAS認証を取得しており、認証団体は株式会社ACCISだと公式サイトに書かれています。
飼育密度については、公式サイトに載っている数値がそのまま参考になります。小林農園によれば、有機JASの基準は鶏1羽あたり0.15㎡以上とされていて、同農園は創業当初からその倍以上、0.41〜0.55㎡の広さで飼育してきたそうです。放牧場も同様に、基準0.15㎡に対して1.75㎡を確保していると説明されています。この数値はいずれも同農園の公式サイトに載っているもので、有機JAS規格の条文そのものをこちらで確認したわけではありません。
サイトにはもう一つ、WOAH(世界動物保健機関)が提唱する「5つの自由」との関連についての解説もありました。ただしこれは小林農園自身によるアニマルウェルフェアの説明で、有機JAS規格そのものが「5つの自由」を法令上の根拠として明記しているわけではない、という点は補足しておきます。民間のアニマルウェルフェア団体であるWFCJとアニマルウェルフェア畜産協会には、生産者会員として加入しているそうです。
「平飼い有精卵」と「オーガニック平飼い有精卵」の違いは、鶏に与えるエサがオーガニック飼料かどうかだけで、飼育環境自体は変わらないという説明も、サイトに素直に書かれていました。
エディターの視点: 飼育密度を具体的な数値で、しかも基準値と比較しながら開示している点は、今回調べた中でもっとも透明性が高い部類でした。「平飼い」や「オーガニック」という言葉だけでなく、その中身を数字で確認できるのは貴重です。
トレードオフ: WFCJやアニマルウェルフェア畜産協会への加入は、あくまで「生産者会員」としての参加であり、これらの団体による第三者認証を取得しているという意味ではありません。認証・第三者保証の根拠としては、有機JAS認証を挙げるのが正確です。また、オーガニック飼料の調達が難しいため、今のところ全鶏舎をオーガニック卵に切り替えられているわけではないとも書かれていました。
2. 平飼い有精卵(コケコッコー共和国/地主共和商会)
🐔 12万羽をケージフリーで飼育 📅 創業70年・養鶏30年 📍 三重県多気郡多気町
三重県多気郡多気町で地主共和商会が展開するブランドです。公式サイト(英語版)によれば、創業70年、養鶏を始めて30年、12万羽をケージフリー方式で飼育しているそうです。「狭いケージには入れず、鶏たちは自由に動き回れる」という説明も、サイトの原文でそのまま読めました。
エディターの視点: 12万羽という規模でケージフリー飼育を続けている点は、飼育環境の面では評価しやすい情報でした。
トレードオフ: 公式サイトに掲示されているのは「鶏卵公正取引協議会」の公正マークです。これは表示ルールに関する認証であって、アニマルウェルフェアの第三者認証ではありません。今回確認できた範囲では、AWに特化した第三者認証の取得は見当たりませんでした。
3. 平飼い有精卵さがみっこ(INOUE EGG FARM/井上養鶏場)
📅 創業97年・平飼い60年 🏆 2012年 全国ブランド卵1300種中 総合1位(自社発表) 🎖️ かながわブランド認定
神奈川県相模原市緑区にある井上養鶏場のブランドです。創業97年、そのうち平飼い飼育を60年続けていて、神奈川県の「かながわブランド」にも認定されています。2012年には全国のブランド卵1300種の中で総合1位を獲得したとサイトに書かれていますが、これは自社発表の情報です。
エディターの視点: 長年にわたり平飼いを実践してきた歴史の長さは、一つの安心材料になると思います。
トレードオフ: サイトには「サステナブル、エシカル、アニマルウェルフェアの精神に賛同しています」という理念的な言葉があるだけで、第三者認証の取得についての記載は見当たりませんでした。認証・第三者保証の観点では、今回の9点の中でもっとも情報が少ない商品です。
4. リアルオーガニック卵・放牧卵(黒富士農場)
🥚 2007年 日本初の鶏卵有機JAS認証 ⭐ やまなしアニマルウェルフェア認証 三つ星 📍 山梨県甲斐市・標高1,100m
山梨県甲斐市、標高1,100mに位置する農場です。2007年に日本で初めて鶏卵の有機JAS認証を取得したことは、生産者の公式サイトとコープデリの発表の両方で読み取れました。山梨県が公開しているアニマルウェルフェア認証農場リスト(2026年3月2日更新)でも、採卵鶏部門で最上位区分の「三つ星」に入っています。
一つだけ、必ず伝えておきたいことがあります。この「リアルオーガニック卵」は、農場にある鶏舎18棟のうち1棟だけで生産されている、限定的な商品だという点です。これは生産者の公式サイトにそのまま書かれていました。
エディターの視点: 「日本初」という表示について、生産者とコープデリという独立した二つの情報源で同じ内容が読み取れた点は安心材料でした。ただ、これは農場全体の基準ではなく、あくまで一部の生産ラインの話だと理解しておく必要があります。
トレードオフ: オーガニック認証を受けた卵は生産量が限られているので、通常の「平飼い放牧卵」との違いを理解した上で選ぶ必要があります。
5. たおファームの平飼い卵
⭐ やまなしアニマルウェルフェア認証 三つ星 🏠 四面解放の鶏舎 🌾 輸入飼料不使用・自家配合の発酵飼料 📍 山梨県北杜市白州町
南アルプスを望む山梨県北杜市白州町にある養鶏場です。公式サイトによると、陽光や風が入る四面解放の鶏舎で、生後1日からのびのびと過ごせる環境で鶏を育てていて、エサは輸入飼料を使わず、地元や国産の原料を自家配合・発酵させたものを与えているそうです。
山梨県の公式認証リスト(2026年3月2日更新)では、たおファームは採卵鶏部門で三つ星認証を取得済みとなっています。
エディターの視点: ここで一つ、正直に書いておきたいことがあります。たおファーム自身の公式サイトを見ると、「山梨県アニマルウェルフェア認証」のページには「たおファームは現在認証申請中」という記載がまだ残っていました。一方で、山梨県側の最新の公式リストでは認証取得済みとして載っています。おそらく農場側のサイト更新が追いついていないだけだと思いますが、この記事では、より新しく更新されている山梨県の公式リストを認証状況の根拠にしています。
トレードオフ: 生産者自身の情報発信と行政の認証リストの間に、更新のズレがあることがわかりました。認証の詳細(取得時期など)を正確に知りたい場合は、農場に直接確認することをおすすめします。
乳製品編
6. なかほら牧場の牛乳・乳製品(中洞牧場)
🏔️ 約130haで通年昼夜放牧(山地酪農) 🥇 2017年 アニマルウェルフェア畜産協会「第一号認証」農場 🐄 自然交配・自然分娩・生後2ヶ月の母乳哺育 📍 岩手県岩泉町
岩手県岩泉町にある牧場です。ブランド名は「なかほら牧場」ですが、法人としての正式名称は「中洞牧場(農業生産法人 株式会社企業農業研究所)」です。
約130haの山林を使い、牛舎を持たず一年を通して昼も夜も山で放牧する「山地酪農」を行っていることが公式サイトからわかります。牛の繁殖についても、人工授精を行わない自然交配、自然分娩、生後2ヶ月間の母乳哺育という方針が書かれていました。
一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会の「アニマルウェルフェア畜産認証制度」において、2017年に第一号の認証農場として認定されたことは、協会・生産者双方の情報で確認できました。
エディターの視点: 「第一号認証」という位置づけは、複数の独立した情報源で内容が一致していて、信頼できる情報だと判断しました。放牧地の規模(130ha)も、公式サイトと第三者の紹介記事の両方で同じ数値が出ています。
トレードオフ: 一部のウェブ記事では「山を毎日上り下りするため蹄の手入れが不要になる」といった具体的な効能が紹介されていますが、この記述は牧場の公式情報では見つけられませんでした。この記事ではそうした断定的な記述は取り上げていません。
7. 清泉寮有機ジャージー牛乳(清泉寮ジャージー牧場/公益財団法人キープ協会)
🌱 1949年より放牧酪農・牧草地72ha 🥇 2009年 ジャージー種として日本初の有機JAS認証 ⭐ やまなしアニマルウェルフェア認証 三つ星 📍 山梨県北杜市高根町清里
山梨県北杜市高根町清里にある牧場で、公益財団法人キープ協会が1949年から続けている酪農事業です。72haの牧草地を持ち、牛舎はフリーストール方式で、牛がつながれることなく自由に過ごせる環境になっていると説明されています。
2009年、ジャージー種としては日本で初めて有機JAS規格の認証を受けたことが確認できました。山梨県のアニマルウェルフェア認証制度でも、乳用牛部門で最上位区分の三つ星を取得しています。
エディターの視点: 有機JAS認証とやまなしAW認証という、性質の異なる二つの第三者認証を、どちらも一次情報で確認できたのは珍しいケースでした。牛舎がフリーストール(つながれない方式)であることも明記されていて、飼育環境についての説明が具体的です。
トレードオフ: 生産現場である牧草地や牛舎エリアへの一般見学者の立ち入りは禁止されています(隣接する放牧スポットで引退牛とふれあうことはできます)。生産の様子を直接見ることはできない前提で、情報を確認しておく必要があります。
8. よつ葉放牧生産者指定ノンホモ牛乳(よつ葉乳業)
🌾 一般社団法人日本草地畜産種子協会「放牧畜産実践牧場」認証 🐄 北海道十勝忠類地区5戸の酪農家が対象 🥛 72℃15秒殺菌・ノンホモジナイズ製法
北海道十勝の忠類地区にある5戸の酪農家が出荷する生乳を使った牛乳です。一般社団法人日本草地畜産種子協会による「放牧畜産実践牧場」認証を受けた農家が対象になっていることは、よつ葉乳業の公式サイトと農林水産省の資料の両方で確認できました。
製法としては、乳脂肪分を均質化しないノンホモジナイズ製法で、72℃15秒間のパスチャライズ殺菌が行われています。
エディターの視点: 認証の名称、認証機関、対象農家数(5戸)まで、公式サイトと行政資料とで内容が一致していたのは安心材料でした。
トレードオフ: 一部の紹介記事に具体的な認証番号の記載を見かけましたが、よつ葉乳業の公式サイトと農林水産省の資料では、その番号を確認できませんでした。取扱店舗は生協の宅配(コープ自然派など)が中心のようで、店舗によっては店頭で見かけないこともあります。
認証があっても、確認する習慣は残しておきたい
今回9点を調べてみて感じたのは、「認証を取得している」という事実と、「その認証の中身がどこまで具体的か」は、必ずしも一致しないということです。
飼育密度を数値で開示している生産者もいれば、「アニマルウェルフェアの精神に賛同」という言葉だけにとどまる生産者もいました。行政の認証リストと生産者自身のサイトの情報が食い違っているケースもありました。
表示や認証マークは、選ぶときの手がかりにはなりますが、それだけですべてを保証してくれるわけではありません。気になる商品があれば、パッケージの表示だけで判断せず、一度公式サイトを覗いてみる。そんな習慣をつけてみてもいいかもしれません。
さいごに
「アニマルウェルフェアに配慮した商品」という括り方は便利ですが、その中身は生産者によってかなり幅があります。飼育密度を数字で語れる生産者もいれば、理念だけを語る生産者もいる。どちらが良い悪いということではなく、どこまで具体的に確認できるかをまず知っておくことが、選ぶための土台になると思います。
あなたが次に手に取る卵や牛乳は、どんな環境で育った動物から生まれたものでしょうか。
掲載情報は各生産者の公式サイト、山梨県・農林水産省などの行政公開情報に基づき、2026年7月時点で確認しています。認証状況・取扱店舗は変更される場合がありますので、購入前に各公式サイトでご確認ください。








