地球温暖化で毎年暑くなっていますね。外に出かける時に必要不可欠なのが、日傘です。
毎年夏になると、新しい日傘を買い替えていませんか?骨が折れた、生地が破れた、UVカット効果が落ちたなど、様々な理由で日傘を捨ててしまう方が多いのが現状です。しかし、本当に質の良い日傘を選べば、何年も、時には何十年も使い続けることができるのです。
日傘を消耗品として扱うのではなく、長期間愛用できる「投資」として考えることで、経済的にも環境的にもメリットが生まれます。初期費用は高くても、長い目で見れば確実にお得になり、さらに地球環境への負荷も大幅に軽減できます。
ファッション業界は世界で2番目に環境汚染の激しい産業とされており、傘業界も例外ではありません。安価で大量生産された傘が毎年大量に廃棄される現状を変えるためには、私たち消費者の意識改革が必要です。
サステナブルな日傘選びは、単なる環境保護だけでなく、職人技の継承、地域経済の活性化、そして何より自分自身の生活の質向上にもつながる重要な選択なのです。
なぜ多くの日傘は短命なのか?
安価な素材や構造の問題
市場に出回っている多くの日傘は、コストを抑えるために安価な素材が使用されています。骨組みには強度の低いアルミニウム合金や安価なスチールが使われ、生地には薄手のポリエステルが採用されることが多いのです。これらの素材は軽量で安価という利点がある一方で、耐久性に課題があります。
特に問題となるのは、接合部分の強度不足です。安価な傘では、骨と布の接続部分や、骨同士の連結部分が弱く設計されているため、強風や頻繁な開閉によって簡単に破損してしまいます。また、生地の縫製も簡素化されており、紫外線や雨水による劣化が早く進行します。
修理できない設計の傘が多い現状
現在市場に流通している多くの日傘は、修理を前提とした設計になっていません。パーツの交換ができない構造や、特殊な接着剤で固定された部品など、一度壊れたら修理が不可能な設計が主流となっています。
メーカー側も修理サービスを提供していないケースが多く、消費者は壊れた傘を捨てて新しい傘を購入するしか選択肢がない状況に置かれています。この「修理より買い替え」の文化が、傘の使い捨て化を加速させているのです。
紫外線カット効果の低下
一般的に日傘の耐用年数は、素材・使用頻度・保管状況によって異なりますが、標準的なポリエステル製やコットン製の日傘は、毎年数ヶ月(春~夏)使用した場合でおおよそ2~3年程度が目安と言われます。この期間を過ぎると、紫外線カット効果の低下が目立つようになります。
紫外線カット加工は、雨傘よりも機能低下が早く、効果が薄れていきます。多くのメーカーも「紫外線カット効果の目安は2~3年」と案内しているように、紫外線カット効果を優先して買い替えなければいけない場合もあります。
廃棄される傘が環境に与える影響
プラスチックや金属のゴミ問題
日本国内だけでも、年間約1億本以上の傘が廃棄されていると推定されています。これらの傘には、ポリエステル生地、プラスチック部品、金属の骨組みなど、分解に長時間を要する素材が大量に使用されています。
特に深刻なのは、マイクロプラスチックの問題です。廃棄された傘の生地が自然環境で細かく分解される過程で、マイクロプラスチックが土壌や水系に放出され、生態系に深刻な影響を与える可能性があります。また、金属部品のリサイクル率も低く、貴重な資源が無駄になっている現状があります。
燃やせない複合素材による課題
現代の傘は、異なる素材を組み合わせて作られているため、適切な分別とリサイクルが困難です。生地、骨組み、ハンドル、金具など、それぞれ異なる処理方法が必要な素材が一体化されているため、完全に分離することは非常に困難です。
この複合素材の問題により、多くの廃棄傘が埋立地に送られることになり、長期間にわたって環境負荷を与え続けています。燃焼処理においても、有害物質の発生リスクがあるため、適切な処理には高いコストがかかります。
サステナブルな日傘とは?
長く使える素材と構造
骨組みの強度や耐久性
サステナブルな日傘の最も重要な要素は、骨組みの強度です。高品質な日傘では、カーボンファイバーやグラスファイバー、または厚手のスチールなど、耐久性に優れた素材が使用されています。特に、風に対する柔軟性と復元力を兼ね備えた素材選びが重要です。
骨組みの設計においても、応力分散を考慮した構造や、破損しやすい接合部分の補強など、長期使用を前提とした工夫が施されています。また、骨の本数が多い傘ほど荷重が分散され、個々の骨にかかる負担が軽減されるため、耐久性が向上します。
生地のUVカット性能
日傘の生地選びでは、UVカット性能の持続性が重要な指標となります。安価な傘では表面コーティングによってUVカット効果を実現していることが多く、使用とともに効果が低下します。一方、高品質な日傘では、生地自体にUVカット機能を織り込んだり、特殊な繊維を使用したりすることで、長期間にわたって効果を維持できます。
晴雨兼用ではなく、日傘専用を選ぶことで紫外線カット性能を伸ばすことができます。UVコーティングがされている場合、雨に濡れるとコーティングが落ちやすいので、日傘専用のタイプがおすすめです。
また、黒や濃紺などの濃い色はUVカット効果が持続しやすい傾向があります。裏側に暗い色を使っているタイプも、UVカット効果が得られます。
修理しやすいデザイン
パーツ交換ができるか?
真にサステナブルな日傘は、部品の交換が可能な設計になっています。骨の一部が破損した場合でも、その部分だけを交換できる構造や、生地の張り替えが可能な設計など、修理を前提とした作りになっています。
特に重要なのは、標準化されたパーツの使用です。特殊な部品や独自規格の部品を使用していると、修理時に部品の調達が困難になります。可能な限り汎用性の高い部品を使用し、将来的な修理やメンテナンスに配慮した設計が理想的です。
傘職人やメーカーの修理対応の有無
サステナブルな傘ブランドの多くは、充実した修理サービスを提供しています。購入後のアフターサービスが充実していることは、その傘が長期使用を前提として設計されている証拠でもあります。
修理サービスの内容も重要で、単純な破損修理だけでなく、定期的なメンテナンス、パーツのアップグレード、生地の張り替えなど、包括的なサービスを提供しているブランドを選ぶことが大切です。
環境に配慮した素材選び
再生素材・オーガニックコットンやリサイクルポリエステル
環境負荷を軽減するため、多くのサステナブル傘ブランドでは再生素材を積極的に使用しています。オーガニックコットンは、農薬や化学肥料を使用せずに栽培されるため、土壌汚染や水質汚染のリスクが大幅に軽減されます。
リサイクルポリエステルは、ペットボトルなどの廃プラスチックを原料として作られるため、新たな石油資源の消費を抑制できます。また、廃棄物の有効活用という観点からも、循環型社会の実現に貢献しています。
環境負荷の少ない染料や加工
生地の染色や加工における環境配慮も重要な要素です。従来の化学染料や加工剤には、環境や人体に有害な物質が含まれている場合があります。サステナブルな傘では、天然染料の使用や、有害物質を含まない加工方法の採用が進んでいます。
特に注目されているのは、エコテックス規格などの国際的な安全基準に適合した素材の使用です。これらの規格では、350種類以上の有害物質について厳格な基準が設けられており、安全性と環境配慮を両立できます。
おすすめサステナブル日傘ブランド5選
小宮商店
おすすめポイント
- 修理サービスあり
- ハンドメイド
- オーガニックコットン素材
小宮商店は、江戸時代から続く老舗の傘メーカーとして、伝統的な職人技術を現代に継承しています。同社では「小宮商店でご購入いただいた傘をできるだけ長くお使いいただくため、故障が発生した場合は、パーツがある限り修理やメンテナンスを承ります」という方針を掲げています。
すべての傘がハンドメイドで製作されており、熟練職人による丁寧な仕上げが特徴です。特にオーガニックコットンを使用した日傘は、天然素材ならではの優しい肌触りと、優れたUVカット性能を兼ね備えています。伝統技術と環境配慮を両立させた、真にサステナブルな傘づくりを実践しているブランドです。




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AMVEL UMBRELLA STORE
おすすめポイント
- 修理サービスあり
- 責任のある製造
- PFOAフリーの撥水剤
AMVEL UMBRELLA STOREは、「お客様の大切な傘を長く愛用していただくために、傘業界最高水準の手厚い保証とサービスをお約束します」をモットーに、高品質な傘づくりを行っています。
同社の環境への取り組みは非常に包括的で、傘生地の製造を台湾の大手生地メーカーに委託し、エコテックス®スタンダード100に準拠した工場で生産しています。この工場では350種以上の有害物質を対象とした世界最高水準の安全基準が適用されており、特定芳香族アミンを生ずるおそれのあるアゾ染料も使用していません。
撥水加工においても、2020年秋からPFOAフリーの撥水剤に切り替えを開始し、人体と環境への安全性を向上させています。傘フレームについても、有毒とされるメッキ加工を極力減らし、代替の黒電着塗装を採用するなど、細部にわたって環境配慮が徹底されています。



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フォックス・アンブレラ
おすすめポイント
- ハンドメイド
- 修理サービスあり
イギリスの老舗ブランドであるフォックス・アンブレラは、1868年の創業以来、最高品質の傘を作り続けています。英国の熟練職人の手によって一本ずつ丁寧にハンドメイドされる傘は、凛とした細巻のフォルムと優れた強度を誇り、実用性に優れた最も美しい傘として世界中で愛用されています。
日本では、ヴァルカナイズ・ワークスがフォックス・アンブレラの修理を専門に行う老舗工房と提携し、長傘・日傘・テレスコピック(折りたたみ傘)のリペア・メインテナンスのフルサービスを提供しています。伝統的な英国傘の技術を現代に継承し、一生涯使い続けることができる傘として高い評価を得ています。




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AURORA
おすすめポイント
- アフターサービスの修理
- ペットボトルリサイクル素材
- 再生素材
AURORAは「お買い上げいただいた大切な傘を愛着を持って長く使っていただける様、責任をもってメンテナンスを承っています」として、お買い上げ後1回目は無償修理を提供するなど、充実したアフターサービスを展開しています。
環境への取り組みも積極的で、地球環境を考えてポリエステル加工糸とペットボトルをリサイクルした高品質な「&+®」の糸で織り上げた生地を日傘(晴雨兼用傘)に使用しています。「&+®」は、日本国内の自治体や店頭などで回収し、きちんと分別されたクリーンなペットボトルを原料とするため、従来の糸と同様の高い白度が得られます。
さらに、繊維業界が抱える廃棄問題の解決に取り組む「レニュープロジェクト」に参加し、廃棄されてきた衣料品や生地を回収・リサイクルして再生糸として生まれ変わらせる取り組みにも積極的に関わっています。
また、ORGABITS(オーガビッツ)プロジェクトにも参加し、オーガニックコットン10%の商品を多くの人に届けることで、みんなで”ちょっと(bits)”ずつ地球環境と社会に貢献する取り組みを推進しています。

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芦屋ロサブラン
おすすめポイント
- 修理サービスあり
- 高いUVカット素材
芦屋ロサブランは、日本の上質な日傘ブランドとして、機能性とデザイン性を両立させた製品づくりを行っています。同社では修理サービス(ネットショップ以外)を提供し、購入後も長期間にわたって製品をサポートしています。
特に日傘としての機能性に優れており、99%以上のUVカット率を実現した生地や、遮熱効果の高い特殊コーティングなど、日本の厳しい紫外線環境に対応した高性能な製品を展開しています。品質の高さと美しいデザインで、長く愛用できる日傘として多くの愛用者に支持されています。



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日傘を長持ちさせるためのポイント
日常の取り扱いで気をつけたいこと
開閉の仕方や収納方法
日傘を長持ちさせるためには、正しい開閉方法を身につけることが重要です。開く際は、骨を無理に広げようとせず、中央のボタンやスライダーを使って自然に開くようにします。急激な開閉は骨組みに負担をかけるため、ゆっくりと丁寧に操作することが大切です。
収納時は、傘を完全に乾燥させてから畳むようにします。湿ったまま収納すると、カビや臭いの原因となり、生地の劣化を早めてしまいます。また、折りたたみ傘の場合は、毎回同じ折り目で畳むのではなく、時々折り方を変えることで、特定の部分への負担集中を避けることができます。
メンテナンス方法
生地のケアと骨組みの点検方法
生地のメンテナンスでは、定期的な汚れ落としが重要です。中性洗剤を薄めた水で優しく拭き取り、その後清水で洗剤分を除去します。UVカット加工が施されている生地の場合は、強い洗剤や漂白剤の使用は避け、できるだけ優しい方法でケアすることが大切です。
骨組みの点検では、接合部分の緩みや亀裂がないかを定期的にチェックします。金属部分にサビが発生していないか、プラスチック部分に劣化や変色がないかも確認し、問題を発見した場合は早めに修理に出すことで、大きな破損を防ぐことができます。
また、傘の保管場所も重要で、直射日光が当たらない風通しの良い場所に保管し、湿気や極端な温度変化を避けることで、素材の劣化を最小限に抑えることができます。
UVカットスプレーの活用
UV効果は劣化していきます。なので、市販のUVカットスプレーを表面に吹きかけることで、コーティングを補強し、紫外線防止効果を延長できる。特に2年に1度程度の再スプレーがおすすめです。
さいごに
サステナブルな日傘を選ぶことは、単なる環境保護活動を超えて、より豊かなライフスタイルの実現につながります。高品質な日傘は優れた機能性を持ち、暑い夏を快適に過ごすためのパートナーとして長年にわたって活躍してくれます。
職人技術の継承、地域経済の活性化、環境負荷の軽減など、サステナブルな選択には多面的な価値があります。次に日傘を購入する際は、ぜひ「長く使える一本」を選び、快適な夏と環境配慮を両立させた新しいライフスタイルを始めてみてください。