ミニマリストを目指してから、衣替えをしたことがありません。持っている服は、ラック1つと収納箱1個に入るぶんだけです。
この秋、服をいくつか足そうか考えています。そこで分からなくなりました。足すなら何を足せば、衣替えをしないままでいられるのか。
衣替えをやめるなら、一年分の服が入る収納が要る。そう思うかもしれません。でも、私が衣替えをしないでいられるのは、収納が広いからではなく、服が少ないからです。
この記事では、まず衣替えがどんな前提のうえに成り立つ習慣なのかを、歴史と気温から確かめます。そのうえで、季節をまたいで着られる服を、素材と枚数から考えます。服を増やさないことは、環境への負担をどう減らすのか。その数字も紹介します。
衣替えは、しなくていい。困らないかは服の量と素材で決まる
衣替えは、やめても困りません。やめ方は2通りあります。一年分の服がしまえるだけの収納を用意するか、季節をまたいで着られる服を中心に、1か所に収まる量まで枚数を絞るかです。
私がしているのは、枚数を絞るほうです。こちらなら、季節ごとに服を出し入れする作業そのものがなくなります。季節の境目に替えるのは、服ではなく、重ねる枚数です。
だから服を足すときも、厚手のコートのように1枚で季節を区切る服ではなく、重ねて使える1枚を選べば、衣替えをしないままでいられます。
それでも残る手間が2つあります。しばらく着ない服は、洗ってから置くこと。ニットのように吊るすと伸びる服は、たたんでおくことです。
衣替えは、何を前提にした習慣なのか
衣替えは、「決まった日に季節が替わる」ことと、「季節ごとに別の服を持つ」ことを前提にした習慣です。このうち日付の前提は、いまの気候とずれてきています。
6月1日と10月1日は、気温ではなく制服の慣習から来ている
6月1日と10月1日に替える習わしは、明治に洋式の制服が入ってから広まったものです。それより前の衣替えは、日付も回数も違いました。
後醍醐天皇の作と伝わる『建武年中行事』には、朝廷で4月1日と10月1日に衣替えをしていたという記述があります。日付は旧暦です。
江戸時代には、これが年に4回になります。4月1日からは裏地のある袷(あわせ)、5月5日からは裏地のない帷子(かたびら)。9月1日にいったん袷に戻し、9月9日からは綿を入れた小袖に替えました。
季節ごとに仕立ての違う着物を持っていることが、この習慣の前提でした。衣替えの日は、その着物を入れ替える日です。
明治政府が洋式の制服を取り入れると、夏服は6月1日から、冬服は10月1日から、という慣習が一般に広まりました(岡山県立図書館: 2017)。
ただ、この日付を全国一律に定めた法令があるのかは、はっきりしません。いまは、学校や会社がそれぞれの決まりで替えています。
10月1日に、季節はもう替わっていない
平年値で見ても、東京の10月1日の最高気温は24.5℃。夏日(最高気温25℃以上の日)の一歩手前です。月末の10月31日になって、ようやく19.6℃まで下がります(気象庁「日ごとの値」)。
しかも、この平年値は1991〜2020年の30年間の平均です。10月は、そのあとも暑くなっています。
気象庁によると、日本の10月の平均気温は、100年あたり1.53℃の割合で上がってきました。観測を始めてからいちばん暑い10月は2024年、2番目は2025年です(気象庁「月平均気温偏差」)。
日付どおりには替えない学校もあります。東京都立東村山西高等学校のお知らせには、「暦の上では衣替えですが、熱中症対策等を考慮いたしまして」とあります。2024年の移行期間は、10月2日から25日まででした(東京都立東村山西高等学校: 2024)。
暦の日付で一斉に替えると、冬物しか手元にないのに暑い日が来ます。決まった日に季節が替わる、という前提は、もう成り立ちにくくなっています。
季節をまたげるかどうかは、素材と重ね方で決まる
少ない服で季節の境目を過ごすなら、着る季節が限られる服より、重ねて暖かさを調整できる服が向いています。素材によって違うのは、湿気をどれだけ吸うかと、着ないあいだに虫に食われやすいかどうかです。
綿・麻・ウール・化繊は、湿気の吸いやすさと虫への強さが違う
素材ごとに向く気温が分かれば服を選びやすいのですが、「何℃から何℃ならこの素材」と示した基準は見当たりません。
差がはっきり出るのは、湿気の吸いやすさです。同じ温度と湿度のもとで比べると、ウールは綿の2倍近く、ポリエステルの40倍ほどの水分を含みます(HVAC Systems Encyclopedia)。
もうひとつの差は、虫に食われやすいかどうかです。服に穴をあける虫の幼虫は、ウールや絹、羽毛、革といった動物由来の素材を食べます。食べこぼしや皮脂がついたままの服も、狙われやすくなります(Susan Wright: 2001)。
湿気と虫の2点で、素材を並べると次のようになります。
| 素材 | 湿気の吸いやすさ | 衣類の虫の餌になるか |
|---|---|---|
| ウール | よく吸う | なる(動物由来) |
| 麻(リネン) | よく吸う | 主な餌ではない |
| 綿 | ほどほどに吸う | 主な餌ではない |
| ポリエステルなどの化繊 | ほとんど吸わない | 主な餌ではない |
衣替えをしない暮らしでとくに気をつけたいのは、ウールの服です。夏のあいだは着ないまま手元に置いておくことになるので、春に着納めたら、汚れを落としておきましょう。
服を入れ替えず、重ねる枚数で暖かさを変える
服の暖かさを大きく支えているのは、繊維そのものより、そのすき間に閉じこめた空気です。繊維は空気の5〜20倍も熱を通すので、熱を逃がしにくいのは空気のほうです(Rogale et al.: 2023)。
空気がたまるのは、糸や生地のすき間だけではありません。薄い服を重ねれば、服と服のあいだにも空気の層ができます。
衣替えをしない暮らしでは、服を入れ替える代わりに、この重ねる枚数を足したり引いたりします。10月1日に冬物へ替えるのではなく、涼しい朝は半袖の上に1枚羽織り、昼に暑くなったら脱ぐ。もっと冷えてきたら、下の半袖を長袖に替える。季節の境目は、そうやって少しずつ越えていけます。
だから、服を足すなら、重ねて使える1枚です。厚手のコートのように着る季節が限られる服は、1枚増えただけで、また季節ごとの出し入れが始まります。
衣替えをやめるなら、減らすのは収納の手間ではなく枚数
収納を増やしてやめる方法では、服はいまの量のままです。枚数を絞ってやめる方法なら、服をしまう作業そのものがなくなります。
収納を増やすか、枚数を絞るか
2つのやめ方を比べると、次のようになります。
| やめ方 | 用意するもの | 服の量 |
|---|---|---|
| 収納を増やす | ハンガーラック、収納ケース、トランクルームなど | いまのまま |
| 枚数を絞る | なし(いまの収納のまま) | 1か所に収まる量まで |
どこまで絞れるかは、着ていない服の数が手がかりになります。環境省の調査では、1人が1年に買う服は約19枚。一方で、1年間一度も着ていない服は約24枚ありました(環境省)。
1年に買う枚数より多い服が、着ないまま収納に入っている計算です。収納を増やすと、増えるのはこの服の置き場所です。
ただ、絞るために捨てても、環境への負担は減りません。手放すなら、次に着る人を探すところからです。
しばらく着ない服は洗ってから置き、ニットはたたんでおく
衣替えをしないと、服が虫に食われたり傷んだりしないか、気になるかもしれません。手入れで大事なことは、衣替えをする場合と同じです。しばらく着ない服は、洗って汚れを落としてから置いておきます。
汚れたままだと、虫に狙われやすいからです(Susan Wright: 2001)。虫がつかなくても、汗や皮脂の汚れは、時間がたつと酸化します。そのせいで服の色が変わったり、繊維が弱って切れたりします(Canadian Conservation Institute)。
ニットは、ハンガーに吊るさず、たたんで置きます。吊るすと肩や首に重さが集まり、編み目が伸びてしまうからです(U.S. National Park Service: 2020)。
どれも、米国の大学が出している資料や、博物館が衣装を長く保存するための指針で勧められている方法です。
服を増やさないことは、環境への負担を減らす
服が環境にかける負担の大半は、つくられて店に並ぶまでに出ています。そのため、負担を減らすのに役立つのは、いまある服を手放すことより、新しい服を増やさないことです。
負担の多くは、服が店に並ぶまでに出ている
環境省の試算では、服を1着つくるごとに、CO2が約25.5kg出て、水が約2,368リットル使われます。CO2の94.6%は、原料をつくってから店まで運ぶまでのあいだに出ています(環境省: 2020)。
ただし、これは日本に出回る服全体をならした平均です。手元のTシャツ1枚を測った値ではありません。とくに水は、9割が原料をつくる段階で使われ、その大半は綿の栽培に使われています。どれだけ綿を使った服かで水の量が大きく変わるのは、そのためです。
一方、日本の国内で出るCO2だけに絞ると、洗濯や乾燥など、服を着ているあいだに出る分が3割を超えます。負担は、つくる段階だけで決まるわけではありません。
では、1着を長く着ると、負担はどれだけ変わるのでしょうか。英国の資源循環の団体 WRAP は、服を着る期間を9か月延ばすだけで、CO2・水・ごみの負担を最大20%減らせるとしています。英国での服の使われ方をもとにした試算です(WRAP: 2024)。
減らすために捨てても、負担は減らない
服をつくったときの負担は、捨てても戻りません。減るのは、新しく買わなかった分です。
2020年に日本で手放された服は78.7万トン。そのうち64.8%にあたる51.0万トンが廃棄され、リユースされたのは19.6%でした(環境省: 2020)。
いまの環境省の説明では、焼却や埋め立てにされる服は1日平均1,300トンです。リユースとリサイクルは合わせて約42%ですが、ここには海外への輸出が含まれます(環境省)。
輸出された古着がその先でどうなるかは、追いきれていません。欧州環境機関によると、2019年にEUから輸出された中古の繊維は、46%がアフリカ向けでした。再利用できないものの多くは、野積みの埋立地などに行き着いています(European Environment Agency: 2023)。
日本から輸出された服のその後は、はっきりしていません。
環境省が勧める順番は、まず長く着ること。手放すときは、リユースで次に着る人を探し、それが難しければ資源回収に出します。衣替えをやめるために服を絞るときも、この順番で手放します。
さいごに
衣替えは、10月1日に季節が替わることと、季節ごとに別の服を持っていることの2つを前提にしています。この2つが自分の暮らしで成り立っているかどうかで、衣替えが要るかどうかが決まります。
東京の10月1日は、平年でも最高気温が夏日の一歩手前です。日付の前提は、もう成り立ちにくくなっています。残るのは、季節ごとに別の服を持つかどうかです。こちらは、自分で選べます。重ねて調整できる服を中心にすれば、衣替えをやめても困りません。
やめ方は、収納を増やすより、枚数を絞るほうをおすすめします。絞るときは捨てずに次に着る人を探し、そのあとは服を増やさないようにします。足すなら、重ねて使える1枚です。
今日からできることが1つあります。クローゼットを開けて、去年の秋に一度も着なかった服を数えてみてください。その数が、どこまで絞れるかの手がかりになります。
厚手のコートのように着る季節が限られる服や、たまにしか着ない服は、持たずに借りる方法もあります。借りるときも、手元に置く服が増えない使い方かどうかが分かれ目です。洋服のレンタルについては、服を借りるという選び方に書いています。
出典
岡山県立図書館(2017)「衣替えの歴史を知りたい。」国立国会図書館 レファレンス協同データベース.
環境省(2020)「令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務 -『ファッションと環境』調査結果-」株式会社日本総合研究所.
東京都立東村山西高等学校(2024)「衣替えのお知らせ」.
Canadian Conservation Institute. “Caring for textiles and costumes”.
European Environment Agency (2023). “EU exports of used textiles in Europe’s circular economy”.
HVAC Systems Encyclopedia. “Fiber Moisture Pickup”.
Rogale, D. et al. (2023). “Measurement Methods of the Thermal Resistance of Materials Used in Clothing”. Materials (Basel).
U.S. National Park Service (2020). Conserve O Gram 4/5 “Storage Techniques for Hanging Garments: Padded Hangers”.
WRAP (2024). “Extending Product Lifetimes: WRAP’s Work on Clothing Durability”.
Wright, Susan (2001). “Preventing Damage from Clothes Moths and Carpet Beetles”. New Mexico State University, Guide C-504.


