リード文
突然ですが、私は固形シャンプーがとても好きです。
バスルームの棚からプラスチックボトルが消えた朝の、あのすっきりした感覚。ゴミの量が目に見えて減っていく実感。「替えてよかった」と思える、数少ない消費の選択のひとつだと感じています。
ゼロウェイストやサステナブルな暮らしに関心のある方に、固形シャンプーへの移行は、今すぐ始められる具体的な一歩としておすすめしたいと思っています。
今回ご紹介するのは、大阪の老舗石鹸メーカー・株式会社マックスが手がける「The BAR ソリッドシャンプー」の商品レビューです。自費購入してから約6ヶ月、実際に使い続けた体験と、成分・ブランドへの率直なリサーチをもとにお伝えします。「良い点」だけでなく「気になる点」も包み隠さずお届けしますので、購入を検討されている方の参考になれば幸いです。
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クイック・サマリー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | The BAR ソリッドシャンプー |
| メーカー | 株式会社マックス(大阪市)/製造:奈良工場 |
| 内容量 | 80g |
| 入手方法 | 楽天市場ほか |
| パッケージ | 紙(コンパクト) |
| 主洗浄成分 | ココイルイセチオン酸Na(植物由来原料ベース) |
| 第三者認証 | なし(確認できず) |
エコ哲学 6基準・早見評価
| 基準 | 評価 | 一言 |
|---|---|---|
| ①不要な消費の回避 | ★★★☆☆ | 長持ちするが、「使わない選択」は促さない |
| ②耐久性・長期使用性 | ★★★★☆ | セミロング・2日に1回で約6ヶ月は実証値として高評価 |
| ③環境配慮素材 | ★★☆☆☆ | 主剤は植物原料ベースも、一部成分の環境影響に気になる点あり |
| ④労働倫理 | ★★☆☆☆ | サプライチェーン・工場労働条件の開示なし |
| ⑤地域ビジネス支援 | ★★★★☆ | 国内(大阪・奈良)製造、116年の地場メーカー |
| ⑥透明性・GW警戒 | ★★☆☆☆ | 「環境配慮型」を名乗るが、検証可能な根拠がもう少し欲しい |
総合:★★★☆☆(3.0/5.0) 「使う価値はあります。ただ、ブランドの言葉をそのまま鵜呑みにしないほうがいいかも」
ブランドの透明性とリサーチ
株式会社マックスは創業1908年、大阪に本社を置く石鹸・入浴剤の専門メーカーです。100年以上の製造技術の蓄積は本物で、奈良工場のバーチャル見学コンテンツを公開するなど、製造拠点の存在をオープンにしている姿勢には好感が持てます。
ただ、「The BAR」シリーズの「環境配慮型」という製品名称については、もう少し掘り下げて考えてみたいと思います。
事実として確認できること: プラスチック容器を使用しない紙パッケージはしっかりした事実です。固形化により水分を含まないため、輸送効率の向上による環境負荷の低減が期待できます。ただし、LCA(ライフサイクルアセスメント)の観点では、シャンプーなどのトイレタリー製品の環境負荷は使用時のお湯の消費エネルギーが大部分を占めるとされており、輸送段階の改善だけで製品全体の環境フットプリントが劇的に変わるわけではない点も、誠実に添えておきたいと思います(なお、公式による具体的な比較データは公開されていませんでした)。
現時点で確認できなかったこと: 以下の情報は、公式サイト・製品表示から見つけることができませんでした。
- ヤシ油(主成分の原料)の産地・農園認証(RSPO等)の有無
- 一部のキレート剤成分(
ペンテト酸5Na・エチドロン酸4Na)の生分解性に関する評価 - パッケージ紙のFSC認証などの情報
- 奈良工場における労働環境や調達先に関する情報
「環境配慮型」という名称を掲げるなら、こうした情報が少しずつ開示されていくとより信頼度が増すな、というのが正直な印象です。ただ、これは多くの日本の化粧品メーカーに共通する課題でもあり、マックス社だけの問題というわけではありません。
実際の使用体験
固形シャンプーを初めて手に取ったとき、その軽さと小ささに少しだけ戸惑いました。80gというサイズは、ずっしりとしたボトルシャンプーを使い慣れた手には、頼りなく感じられるかもしれません。
でも、使い始めるとその印象はすっかり変わりました。
泡立ちが想定以上に豊かです。手のひらか泡立てネットで数回転がすだけで、細かい泡がふわっと立ち上がります。すすぎ後の爽快感もしっかりあって、頭皮のスッキリ感を大切にしている方にはきっと気持ちよく使っていただけると思います。洗浄力は「しっかり強め」。これは正直な使用感として記録しておきます。
香りについては率直にお伝えすると、存在感があります。香りに敏感な方や敏感肌の方は、事前にパッチテストをされることをおすすめします。
そして何より驚いたのが、使い続けられる期間の長さでした。セミロングの髪を2日に1回洗うペースで、1本が約6ヶ月持続しました。
あくまで私の使用条件からの推算ですが、ゴミの量を液体シャンプーと比べてみると、液体シャンプー(400ml程度)であれば、同じ期間におよそ2〜3本が必要だったと思います。プラスチックボトル数本分の廃棄を避けられたと考えると、小さくない変化だと実感しています。(使用頻度・髪の長さによって個人差があります)
固形ゆえの「消耗の見え方」も、使ってみて初めて気づいた魅力のひとつです。液体シャンプーは1プッシュで使用する量が決まっています。ちょっと足りないから、もうワンプッシュとしていくと、使いすぎにつながると感じました。固形シャンプーを使用すると、必要な箇所だけ使えるので、自然と使いすぎを防ぎやすいと感じました。
「6つの選定基準」による検証
① 不要な消費の回避
固形化によって1本あたりの使用回数が増え、購入頻度は下がります。この点は素直に評価できます。「洗髪回数を減らす」「そもそも洗髪の必要性を見直す」といった問いかけまではしていませんが、消費量を減らすという意味では着実な一歩です。
② 耐久性・長期使用性
いろいろな固形シャンプーを使ってみましたが、6ヶ月持続という実績は、固形シャンプーのなかでも優秀な水準だと感じています。泡立ちやすいから、使用量が少なくてもしっかり洗えると感じました。また最後まで使い切りやすい形状も、廃棄ロスを最小化してくれます。ポンプの中に残って無駄になる、ということもありません。この基準では自信を持ってプラス評価です。
③ 環境配慮素材
主洗浄剤のココイルイセチオン酸Naは、ヤシ油由来の脂肪酸を主原料とした界面活性剤です。OECD(経済協力開発機構)の基準等において「容易に生分解される(Readily Biodegradable)」と分類されることが一般的で、従来の硫酸系洗浄剤に比べ、皮膚への刺激と水環境への負荷の双方を抑えられる成分として知られています。なお、製造過程では合成工程も含まれており、「植物由来=100%天然」とは言い切れない点は、関心のある方に知っておいていただきたい事実です。
一方で、成分表に含まれるキレート剤(ペンテト酸5Na・エチドロン酸4Na)については、欧州化学物質庁(ECHA)などの知見によれば、環境中での分解に時間がかかる「難生分解性」の性質を持つとされています。石鹸の酸化(変色や異臭)を防ぐ重要な役割を担っていますが、EDTAなどと同様に、水環境への長期的な影響を考慮する視点も必要です。環境負荷を最小化したい方にとっては、注視しておきたい成分といえます。
また、ヤシ油産業は東南アジアの環境問題と切り離せない側面があります。原料の調達先に関する認証情報(RSPO等)が公開されると、より安心して「環境配慮型」という言葉を受け取れるなと感じます。
④ 労働倫理
国内(奈良工場)製造という事実は、労働環境の把握という点でプラスに働きます。日本の労働法規の適用下にある点も安心材料のひとつです。ただし、下請け先や原材料調達先の労働条件については情報がなく、「問題がない」とも「問題がある」とも現時点では言えない状況です。開示が進むといいなと思います。
⑤ 地域ビジネス支援
創業116年、大阪本社・奈良工場という地場製造の歴史は、この基準においてシンプルに評価できます。グローバルなサプライチェーンに乗った大手外資とは異なる、地域に根ざした経済の循環を選ぶことには、消費の選択としての意味があると私は考えています。
⑥ 透明性とグリーンウォッシングへの警戒
「環境配慮型」という名称と「サステナブル」という表現に対して、それを裏付ける第三者認証や定量データが現時点では確認できませんでした。「意図的に誤魔化している」と断定するほどの情報はありませんが、「言葉の根拠をもう少し見せてほしいな」というのが率直な気持ちです。購入の際は、「エコ」という言葉だけに頼らず、ご自身でも成分や背景を少し調べてみることをおすすめします。
メリットとデメリット
✓ 良いところ
- 実証6ヶ月持続で、プラスチック廃棄を数本単位で減らせる(個人の使用条件による)
- 泡立ちと洗浄力のバランスがよく、固形シャンプー入門にも使いやすい
- 紙パッケージでコンパクト。旅行や携帯にも便利
- 国内製造で、老舗の地場メーカーを応援できる
△ 気になるところ
- 「環境配慮型」の根拠がもう少し欲しい: 第三者認証や具体的なデータがあると、より自信を持っておすすめできます
- キレート剤成分の難生分解性:
ペンテト酸5Na・エチドロン酸4NaはECHAの知見でも環境中での分解に時間がかかる成分とされています。「エコ」を謳うなら、代替成分や低濃度設計への取り組みも伝えてほしいと感じます - 「植物由来」の表現について: 主成分は植物原料ベースですが、製造工程には合成プロセスも含まれます。「天然=安全・エコ」と単純に結びつけないよう、ご注意を
- 香りが強め: 香料に敏感な方・敏感肌の方には向かない可能性があります。購入前にぜひ確認を
- 洗浄力が強め: 頭皮の皮脂を取りすぎてしまうこともあるため、使用量の調整をおすすめします
- ヤシ油の調達情報: 主成分の原料に関する認証情報の公開を期待したいです
結論:私たちの選択
「固形シャンプーを試してみたい」「ゴミを減らしたい」と思っている方に、The BAR ソリッドシャンプーは十分におすすめできる一本だと思います。6ヶ月という使用実績が示すコスト効率と廃棄物削減の効果は、数字として無視できません。
ただ、「エコな商品を買えた」という安心感だけで終わらずに、少しだけ立ち止まって考えてみてほしいことがあります。
この製品の「環境配慮」は、プラスチックを紙に替えたこと以上のものを意味しているでしょうか。シャンプーの環境負荷の大部分は、実は「洗うときに使うお湯」に由来するとLCA研究は示しています。容器を替えることと同じくらい、シャワーの時間や温度を見直すことが、環境への貢献として意味を持つかもしれません。
固形シャンプーへの移行は、「やめる選択」ではなく「替える選択」です。それだけでも十分に価値があります。でも、「替えることで終わり」にせず、こうした問いを持ち続けることが、サステナブルな暮らしをより深めてくれると、私は信じています。
消費の選択は、思考の入り口です。終着点ではありません。
推奨度:条件付きでおすすめ 香りの強さと洗浄力の強さを許容できる方、そして「エコ」という言葉を鵜呑みにせず自分なりに使いこなせる方には、同価格帯の液体シャンプーよりもゴミ削減の観点で優位性があります。ぜひ一度試してみてください。
編集後記 & 透明性の開示
本レビューは、筆者が楽天市場にて自費購入した「The BAR ソリッドシャンプー」を約6ヶ月間使用した個人的な体験と、公開情報に基づくリサーチをもとに執筆しています。株式会社マックスとの金銭的・契約的な関係は一切ありません。製品の提供も受けていません。
参照情報:
- EU化粧品規制(EC No 1223/2009)
- 欧州化学物質庁(ECHA)化学物質データベース
- OECD生分解性試験基準(OECD Test Guidelines)
- 化学物質評価研究機構(CERI)有害性評価書
- RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)公式情報
- 株式会社マックス公式サイト(https://www.soapmax.co.jp/catalog/thebar/)








