「サステナブルな冷蔵庫を選びたい」と思ったとき、何を基準にすればいいか迷う方は多いと思います。
冷蔵庫は家庭の年間消費電力量の約14.9%を占め、照明器具やテレビと並んで家庭内で消費電力量が多い家電の一つです(資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ」参照)。また、冷却のための冷媒ガスが内部に封入されており、このガスの種類が気候変動に影響します。「省エネ」「ノンフロン」「自然冷媒」という言葉を製品ページで見かけるようになりましたが、それぞれが何を意味していて、どう比べればいいのかは、なかなか分かりにくいものです。
この記事では、「どの冷蔵庫が正解か」を決めるのではなく、選ぶときに特有の判断材料を整理したうえで、各製品の特徴をお伝えします。「今すぐ買わない」「今使っているものを使い続ける」という選択肢も、同じように尊重されます。
編集部が調べた際の基準
冷蔵庫のサステナビリティを考えるとき、他の家電と異なる固有の論点があります。冷蔵庫は常時稼働するため電力消費の積み重ねが大きく、内部に封入した冷媒ガスの種類によっても気候への影響が変わります。また、大型の耐久消費財であるため、どのくらい長く使えるか・修理できるかも重要な軸です。今回はこの考え方を念頭に、以下の観点を中心に各製品を調べました。
エネルギー消費効率(省エネ基準達成率)
日本では「省エネ法トップランナー制度」により、冷蔵庫の年間消費電力量(kWh/年)はJIS規格(JIS C 9801系)で定められた方法で測定し、基準値が設定されています。製品仕様に「省エネ基準達成率」として記載されるため、比較の起点として利用できます。ただし、達成率は容量・形式によって基準値が異なるため、数値が高くても容量の異なる製品どうしの単純比較は難しい側面があります。実際の消費電力を比べたい場合は、達成率の数値より「年間消費電力量(kWh/年)」という絶対値を同容量・同形式で比較するのがより参考になります。
冷媒の種類と地球温暖化係数(GWP)
冷蔵庫の内部には冷却のための冷媒ガスが封入されています。例えば従来使われてきたHFC系冷媒のR134aのGWPは1430であるのに対し、自然冷媒(R600a:イソブタン)のGWPは3以下と、温暖化への影響が大幅に低い水準にあります(IPCC第6次評価報告書等参照)。近年、日本や欧州の家庭用冷蔵庫ではR600aへの移行が進んでいます。ただし炭化水素系は可燃性を持つため、製品設計上の安全基準も伴います。
耐久性・修理可能性・資源効率
製造時の環境負荷という観点では、長く使うほど年あたりの負荷を分散できますが、一方で使用時の電力消費とのバランスも考える必要があります。なお、日本の家電公取協の規約に基づき、冷蔵庫の補修用性能部品の保有期間はメーカー各社で9年とされています。これは「9年以上の使用が保証される」ということではなく、部品保有の業界基準として認識しておくことが、耐久性や修理可能性を考えるうえでの一つの参照点になります。EUでは、家庭用冷蔵機器を対象とするエコデザイン規則(規則(EU) 2019/2019)において、修理性やリサイクル性などの資源効率要件も導入されています。
サプライチェーンにおける人権・労働慣行
冷蔵庫には電子部品が多く使われており、鉱物・金属サプライチェーンが関係します。OECDは、エレクトロニクス分野を含む企業に向けて、責任ある企業行動のためのデュー・ディリジェンス・ガイダンスを示しています。今回はこうした枠組みへの開示の有無も確認の対象としましたが、執筆時点で確認した範囲では、各社の製品ページ上での具体的な開示は見つけられませんでした。
各国のエネルギー効率基準・ラベリング制度
日本のトップランナー制度、EUのエネルギーラベルに加え、米国のENERGY STAR認証など、各国・地域で冷蔵庫のエネルギー効率を示す基準やラベリング制度が設けられています。なお、日本やEUの制度は法定の基準・ラベリング制度ですが、ENERGY STARは米国環境保護庁・エネルギー省による任意認証プログラムであり、制度の性格が異なります。
「この基準が唯一の正解」ではありません。これらは、公式情報として確認できた範囲での判断材料です。
製品の紹介
1. 日立(HITACHI)|冷蔵庫 GXCCタイプ(R-GXCC67X)
特徴
省エネ基準達成率・冷媒・再生プラスチック使用率という3つの軸について、公式ページ上で情報が開示されている製品です。
サステナブルな取り組み(公式情報より)
ノンフロン冷媒(イソブタン R600a)を採用しており、GWPが非常に低く、HFC系冷媒ではないことが公式ページで明記されています。2021年省エネ基準達成率は107%(年間消費電力量316kWh/年)で、冷蔵室独立冷却システムによるエネルギー効率化設計を採用しています。また、製品全体のプラスチック素材のうち質量比10%以上に再生プラスチックを使用(風路カバー等)していることが公式ページで明示されています。記事の情報には鮮度があるため、最新の仕様は公式サイトでご確認ください。
合いそうな人
- 省エネ基準達成率・冷媒の種類・再生プラスチック使用の3軸をまとめて公式情報で確認したい方
- 大容量(670L前後)の冷蔵庫が必要なファミリー世帯
- 資源効率の情報開示を重視する方
合わないかもしれない人
- 大容量ゆえに本体価格が高く、初期費用を抑えたい方には検討が難しい場合がある
- コンパクトなサイズを重視する方には容量が過剰かもしれない
2. 三菱電機(Mitsubishi Electric)|冷蔵庫 WZシリーズ(MR-WZ61M)
特徴
今回取り上げた製品のなかで、省エネ基準達成率が114%と高い水準にあり、冷媒と断熱発泡ガスの両方についてノンフロン対応が公式ページで説明されています。
サステナブルな取り組み(公式情報より)
ノンフロン冷媒のイソブタン(R600a)とノンフロン断熱発泡ガスのシクロペンタンはいずれもオゾン層破壊係数がゼロとされ、特にR600aはGWPが非常に低い冷媒として位置づけられています(公式サイトで説明されています)。省エネ基準達成率は114%(MR-WZ61Mの場合)で、全室に扉開閉センサーと温度センサーを搭載したAI学習機能により、エコ運転時に約10%の省エネが可能と説明されています。
合いそうな人
- 省エネ基準達成率と冷媒の両方を公式情報で確認したい方
- 断熱材のフロン系ガス使用についても確認したい方
- AI機能による省エネ運転に関心がある方
合わないかもしれない人
- シンプルな設計を好む方には機能が多すぎると感じる場合も
- AI機能を使いこなすことにハードルを感じる方には不要な機能かもしれない
3. シャープ(SHARP)|冷蔵庫 SJ-GK50J
特徴
省エネ基準達成率に加え、廃棄・回収した製品から部材を再利用する「自己循環型マテリアルリサイクル」という取り組みを実施している点が特徴です。
サステナブルな取り組み(公式情報より)
2021年省エネ基準達成率109%。自己循環型マテリアルリサイクル技術として、使用済み家電から回収したプラスチックを再び家電製品の部材として使用する取り組みを実施しています。設計段階から解体・分別を容易にする「リサイクル設計」を実施していることが、環境活動ページで公開されています。
なお、SJ-GK50Jについては今回の調査範囲でR600a冷媒の採用が製品ページ上で確認できていません。同社の別モデル(SJ-MW46H等)ではノンフロン冷媒(R600a)採用が明記されているため、冷媒の種類を重視する場合は機種ごとに仕様をご確認ください。
合いそうな人
- 廃棄・回収・再利用という循環型の取り組みに関心がある方
- 省エネと資源循環の2軸で確認したい方
合わないかもしれない人
- このモデルについて冷媒の種類を最優先に確認したい方(今回の調査では製品ページでの確認ができていません。メーカーへの問い合わせをおすすめします)
- リサイクル実績の詳細な数値(回収率など)を重視する方(今回の調査では確認できていません)
公式サイト
4. パナソニック(Panasonic)|パーソナル冷蔵庫(NR-B18C3)
特徴
一人暮らし向けの小容量モデルで、省エネ基準達成率115%という数値が公式サイトで確認できます。
サステナブルな取り組み(公式情報より)
2021年省エネ基準達成率115%と公式サイトに明記されています。
冷媒の種類や資源効率に関する情報については、執筆時点での調査では、このモデルの公式ページでの確認ができていません。これらを重視する方は、メーカーへの直接問い合わせをおすすめします。
合いそうな人
- 一人暮らしや小容量の冷蔵庫を必要としている方
- コンパクトなサイズで省エネ基準達成率の数値を確認したい方
合わないかもしれない人
- 冷媒の種類や資源効率の情報開示も合わせて確認したい方(今回の調査では確認できていません)
- 大家族や大量保存が必要な方には容量が不足する
5. ミーレ(Miele)|冷蔵庫 K 20000シリーズ
特徴
製品開発時に「20年の使用に相当する耐久テスト」をクリアすることを設計基準としていることを、サステナビリティの核心的な価値として公式に位置づけているブランドです。
サステナブルな取り組み(公式情報より)
製品開発段階において20年間の使用に相当する耐久テスト(ドアの開閉回数テストなど)をクリアすることを基準としていることが、公式サイトおよびサステナビリティレポートで明言されています。これは「20年間の使用を保証する」ということではなく、設計上の耐久目標として位置づけられています。なお、日本国内での長期的な修理体制については、補修用性能部品の保有期間を含め、購入時にメーカーへ確認することをおすすめします。
省エネ基準達成率や冷媒の種類など他の指標については、今回の調査では具体的な数値の確認ができていません。
合いそうな人
- 「長く使えるものを一度だけ買う」という考え方を大切にしている方
- 修理・メンテナンスしながら長期間使うことを前提にできる方
- 初期費用が高くても、長い目で見たコストと廃棄頻度を考えたい方
合わないかもしれない人
- 初期費用を抑えたい方(本体価格が非常に高い)
- 冷媒や省エネ基準達成率の数値も合わせて確認したい方(今回の調査では確認できていません)
公式サイト
6. アクア(AQUA)|冷蔵庫(AQR-17A)
特徴
今回取り上げた製品のなかで省エネ基準達成率126%と最も高い数値が公式情報として確認できています。
サステナブルな取り組み(公式情報より)
2021年省エネ基準達成率126%と公式カタログ等に記載されており、今回の調査範囲ではクラス最高水準の省エネ達成率として確認されています。
冷媒・資源効率・耐久性など他の指標については、今回の調査では公式情報での確認ができていません。省エネ基準達成率は高い数値ですが、単一指標だけでなく、冷媒の種類なども合わせて確認できると判断がより確かなものになります。気になる点はメーカーへの直接問い合わせをおすすめします。
合いそうな人
- 省エネ基準達成率の数値を比較の起点にしたい方
- 比較的コンパクトなサイズで高い省エネ性能を確認したい方
合わないかもしれない人
- 冷媒・資源効率・耐久性など複数の指標を総合して判断したい方(今回の調査では情報が限られています)
- 情報開示の範囲を重視する方
補足:迷いやすいポイントと今回確認できなかった点
迷いやすいポイント
省エネ基準達成率の数値は、容量・形式(ファン式・直冷式など)によって基準値が異なるため、サイズが異なる製品を単純に比較することは難しい側面があります。実際の消費電力量を比べたい場合は、達成率の数値より「年間消費電力量(kWh/年)」という絶対値を同容量・同形式どうしで確認するのがより参考になります。
「ノンフロン冷媒」「自然冷媒」という表記は冷媒の種類を示しますが、具体的な冷媒名(R600aなど)とGWP値が公式に開示されているかどうかを確認することが判断の起点になります。例えばR134aのGWPが1430であるのに対してR600aは3以下と、影響の差は大きく異なります。
耐久性と省エネ性のトレードオフについては、多くのライフサイクル評価では冷蔵庫の環境負荷は使用期間中の電力消費が大きな割合を占めるとされています。環境省の家電買い替え比較サイト「しんきゅうさん」では、お使いの冷蔵庫と現行モデルの消費電力量を個別に比較できます。なお、2016年のJIS測定方法の改正があるため、古いカタログ値と現行モデルの値を単純比較すると実際の差と異なる場合があります。「しんきゅうさん」を使った個別比較が最も参考になります。
この記事の情報には鮮度があります。各製品の仕様・認証状況は変更される可能性があるため、購入前には必ず公式サイトの最新情報をご確認ください。
今回確認できなかった・不十分な点
サプライチェーンにおける人権・労働慣行の開示について、執筆時点で確認した範囲では、各社の製品ページ上ではOECDのデュー・ディリジェンス・ガイダンスに沿った具体的な開示は見つけられませんでした。企業のサステナビリティレポート等には別途記載されている可能性があります。この点を重視する方は、各社のサステナビリティレポートや統合報告書を直接確認することをおすすめします。
修理部品の供給期間・修理対応体制については、業界共通の補修用性能部品の保有期間(9年)という基準はありますが、それ以上の長期的な修理対応については製品・メーカーごとに異なります。今回の調査では定量的な確認ができていません。
パナソニック・アクアについては、省エネ基準達成率以外の環境指標(冷媒・資源効率など)の公式情報が今回の調査では確認できていません。「情報が開示されていない」ということではなく、調査の対象としたページや時点での確認限界であることをご了承ください。
まとめ
冷蔵庫は、電力消費・冷媒の気候影響・耐久性と廃棄という複数の軸で、選び方が環境への影響に関わる製品です。同時に、「正解の一台」は存在しません。
省エネ基準達成率を優先するか、冷媒の種類を重視するか、長く使えることを最優先にするか。あるいは、今の冷蔵庫の年間消費電力量を「しんきゅうさん」などで確認してからもう少し待つ、というのが今の自分には合っている判断かもしれません。
この記事を読んで「もう少し調べてみよう」と感じた部分があればそこを深掘りしてみてください。「まだ決めなくていいな」と感じたなら、それも一つの判断です。選ばないこと、今あるものを使い続けることも含めて、あなたのペースで考えてみてください。








