サステナブルフードとは?環境にも自分にもやさしい「新しい食の豊かさ」を考える

最近、「サステナブルフード」という言葉をよく耳にするようになりました。でも、正直なところ「意識が高い人のための特別な食事」「お金がかかりそう」と感じている方も多いのではないでしょうか。

私自身、最初はそう思っていました。でも、実際に調べてみると、サステナブルフードは決して特別なものではなく、私たちが日々の食事で「何を選ぶか」を少し意識するだけで取り入れられるものだとわかったんです。

今回は、サステナブルフードの基本から、なぜ今注目されているのか、そして無理なく始められる方法まで、わかりやすくお伝えしていきます。

サステナブルフードって、結局何が違うの?

基本的な考え方は4つ

サステナブルフードとは、簡単に言えば「環境にも、人にも、そして将来の世代にもやさしい食のあり方」のこと。具体的には、次の4つの考え方が柱になっています。

食事の内容を見直す

赤身肉や乳製品の過剰な摂取を控えて、豆類やナッツなどの植物性タンパク質を中心にした食事にシフトすること。これだけで、温室効果ガスの排出量を大幅に削減でき、広大な農地も節約できるんです。

フードロスを減らす

世界で生産される食料の約25〜30%が、消費されずに捨てられているという事実をご存知でしょうか。これを減らすことは、食料不足の解消だけでなく、無駄なエネルギー消費や温室効果ガスの削減に直結します。

地産地消と旬を大切にする

効率的に生産された地元の食材や、旬のものを選ぶことで、輸送にかかるエネルギーや保存のための電力を抑えられます。

環境に配慮した農業を応援する

土壌の力を回復させる「保全農業」や、樹木と農業を組み合わせる「アグロフォレストリー」など、自然のサイクルを活かした生産方法が重視されています。

オーガニック、エシカル、ローカル…どう違うの?

サステナブルフードを語るとき、よく一緒に出てくる言葉がありますよね。それぞれの役割を整理してみましょう。

オーガニックは、主に環境への配慮を担っています。化学肥料や農薬を抑えることで土壌の健康を守り、水質汚染や生物多様性の低下を防ぎます。特に植物ベースの食品では、温室効果ガスの排出も少ない傾向にあります。

エシカルは、人道的・社会的な側面を重視します。フェアトレードで農家や労働者が適切な賃金を得られるようにしたり、家畜を快適な環境で育てるアニマルウェルフェア、さらには環境負荷の高い産業から新しい農業へと生産者が移行できるようサポートする「公正な移行」という考え方も含まれます。

ローカルは、地域経済と効率性に貢献します。輸送距離を短くすることで「フードマイル」を削減し、地元の農家から直接買うことで中間コストを抑え、農家の利益を増やします。旬のものを地元で食べることは、その土地の食文化を守ることにもつながるんです。

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なぜ今、サステナブルフードが注目されているの?

食が環境に与えるインパクトは想像以上

実は、私たちの食生活は地球環境に大きな影響を与えています。全人類が排出する温室効果ガスの約21〜37%が食料システムに由来しているんです。

農業は世界の淡水利用の約70%を占めており、化学肥料の過剰使用は水質汚染の原因にもなっています。さらに、農地を確保するための森林伐採は、生物多様性の損失や土地の劣化を招く主要な要因となっています。

環境の変化が、私たちの食を脅かしている

一方で、食料は環境破壊による被害を直接受ける立場でもあります。

気候変動による気温上昇や干ばつ、洪水などの極端な気象イベントは、小麦やトウモロコシなどの主要作物の収穫量に悪影響を及ぼしています。さらに驚くべきことに、大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると、作物の収穫量は増える場合があるものの、タンパク質や亜鉛、鉄分などの栄養価が低下することがわかっているんです。

生産が不安定になれば食品価格は上昇し、低所得層を中心に飢餓や栄養不足のリスクが高まります。

そして見過ごせないのが、世界では8億2100万人が栄養不足に苦しむ一方で、20億人の成人が過体重や肥満であるという「栄養の二重負荷」という矛盾。世界で生産される食料の約25〜30%が消費されずに捨てられていて、これが排出する温室効果ガスは全人類の排出量の8〜10%に相当するというデータもあります。

私たちの健康と暮らしにも直結している

サステナブルフードが注目されるのは、環境問題だけが理由ではありません。私たちの健康や日々の暮らしにも深く関わっているからです。

作物の栄養価低下は、世界的な健康リスクとなりつつあります。気温上昇や異常気象は、カビ毒の発生や食品由来の病原菌の拡散を招き、食の安全を脅かします。

気候変動による不作は食品価格の急騰を引き起こし、私たちの家計、特に低所得世帯を直撃します。健康的で新鮮な食べ物が手に入りにくい「フードデザート」と呼ばれる地域も存在し、社会的な格差を広げています。

でも、逆に言えば、赤身肉や乳製品を控えて植物性タンパク質を中心とした「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」に切り替えることで、個人の温室効果ガス排出量を大幅に削減できることも研究で示されています。ヴィーガンの場合は最大4分の1まで減らせるそうです。

サステナブルフードにはどんな種類があるの?

サステナブルフードと一口に言っても、実はさまざまな種類があります。

植物性タンパク質が最も代表的です。豆類、ナッツ、種実類は牛肉などの赤身肉に代わる主要なタンパク質源として推奨されていて、全粒穀物、野菜、果物と合わせて多様に摂取することが大切です。

次世代の代替タンパク質も注目されています。プラントベース肉は、従来の肉に比べて温室効果ガスの排出量を30〜90%、水の使用量を72〜99%削減できるとされています。動物の細胞を培養して作る培養肉や、タンパク質が豊富で水や土地の必要量が極めて少ない昆虫食も研究が進んでいます。

藻類・菌類も未来の食料として期待されています。海洋や施設で栽培できる藻類や、キノコ、微生物タンパク質など、バイオ経済の一環として新しい可能性が広がっています。

もちろん、肉や魚を完全に排除する必要はありません。持続可能な方法で生産された動物性食品、例えば絶滅の恐れがない魚種を選んだサステナブル・シーフードや、環境再生型農業で育てられた畜産物を選ぶことも大切な選択肢です。

そして、特定の食材そのものではなく、生産・流通方法に注目することも重要です。化学肥料や農薬を抑えたオーガニック食品、輸送に伴うエネルギー消費を削減できるローカルフード(地産地消)など、その「背景」を意識することがサステナブルにつながります。

サステナブルフードは「意識が高い人のもの」?

ここまで読んで、「やっぱりハードルが高そう…」と感じた方もいるかもしれません。でも、大丈夫です。

ローカルフードを選ぶだけでもいい

サステナブルフードは高いイメージがありますが、地産地消を意識すれば、そんなに高いお金を払わなくても取り入れられます。地元の直売所や農家さんから買うことで、新鮮で手頃な食材が手に入ることも多いんです。

肉などの環境に負担がかかる食品をちょっと減らすだけでも効果的。週に1回でも「肉なしの日」を作るだけで、十分意味があります。

「選ぶこと」そのものが価値になる

消費は小さな意思表示です。何を買うか、どこで買うかを意識するだけで、あなたの価値観を社会に伝えることができます。それは日常の延長線でできる、無理のない行動なんです。

食から始める「新しい豊かさ」とは

私が最近考えるようになったのは、サステナブルは制限ではなく、選択なんだということ。

どこにお金を支払っているのかを考えて、価値のあるものにお金を払う。生産者さんに多くのお金が入るように、ローカルなお店で買い物をする。農家さんから直接買うのもいいアイディアです。

環境に配慮した生産者が働きやすい社会になれば、私たちの生活も安定します。それは巡り巡って、私たち自身の未来を豊かにすることにつながるんです。

まとめ

サステナブルフードは、特別な人のための食事でも、我慢を強いるライフスタイルでもありません。

私たち一人ひとりが「どう食べたいか」を問い直すことで、環境にも、自分自身にもやさしい選択が自然と増えていく——それが、これからの時代の”豊かさ”なのかもしれません。

まずは、近所の直売所をのぞいてみる、週に1回だけお肉を減らしてみる、そんな小さな一歩から始めてみませんか?

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