サステナブルとは?環境保護と暮らしの両立を考える

「サステナブル」や「エシカル消費」などの単語を耳にすることが増えてきていると思います。地球温暖化や気候変動の問題が取り上げられるたびに耳にするのが、「サステナブル」だと思います。

カタカナの単語だし、よく意味が分からないという人も多いのではないでしょうか。この記事では「サステナビリティ(持続可能性)」について、簡単に解説したいと思います。

サステナブルの基本の意味を知ろう

「サステナビリティ」という言葉をよく耳にするけれど、実際のところ何を指すのでしょうか?日本語だと「持続可能性」と訳すことができます。実はとてもシンプルで、一言で表すなら「物事が、ずっと長く続いていけるかどうか」を測る考え方のことです(Thompson & Norris 2021: 1-2)。これは、私たちの日常のちょっとした行動から、地球全体の大きな動きまで、すべてに当てはまる概念なんです。

なぜ今、サステナビリティが重要なのでしょうか?それは、人間の活動が地球環境を大きく変える「人新世(Anthropocene)」という時代に私たちが生きているからです。今まさに「このまま進むか、それとも社会を根本から変えるか」という大きな分かれ道に立っているのです。

サステナビリティを理解する4つのポイント

1. すべてはつながっている(システム思考)

私たちは「システム思考」を大切にする必要があります。これは、一見関係なさそうな出来事が、実はすべてお互いに影響し合っているという考え方です。たとえば、あなたがお店で買う商品一つひとつが、地球の遠い場所の環境や人々の暮らしにどうつながっているのか、といった視点を持つことです。

2. 環境だけじゃない「3つのE

サステナビリティは環境保護だけではありません。「環境(Environment)」「経済(Economy)」「社会の公平性(Equity)」という3つの要素が密接に関わり合って、長く続けられる状態を目指すものです。会社が利益を出し続けることも、そこで働く人が健康で幸せに暮らせることも、すべてサステナビリティの大切な一部なのです。

3. 「よりマシ」では不十分

「持続可能」とされる商品でも、実は「以前より少しだけ環境に良い」程度の場合があります。たとえば、オーツミルクのコーヒーが牛乳のコーヒーより二酸化炭素排出量が少なくても、地球の本当の限界値から見ると、まだ許容量の3倍も排出していることもあり得ます。本当の持続可能性とは、地球が設定する明確な限界値の範囲内に収まることを指します。

4. 「無限の成長」を見直す

サステナビリティの考え方には、2つの大きな流れがあります。弱い持続可能性だけでなく、強い持続可能性を検討することが必要となっています。

弱い持続可能性(Weak Sustainability)

自然の資源が減っても、人間の技術や経済活動で埋め合わせができるという考え。経済成長を続けながら、環境問題に対処しようとするアプローチですが、これでは根本的な「過剰な消費」の問題は解決しない、という批判も多くあります。

強い持続可能性(Strong Sustainability)

自然の中には、人間の力では決して代わりを作れない、かけがえのないものがある、と考えます。経済成長を無限に追い求めること自体を見直し、物理的な資源の利用を大幅に減らすことを目指します。効率を上げるだけでなく、「全体として消費量を減らす」ことに重点を置き、すべての人に十分な資源が行き渡ることを重視します。

5. 一人ではなく、みんなで行動する

個人が水を大切にしたり、ゴミを減らしたりすることは重要です。しかし、サステナビリティという大きな課題は、私たち一人の努力だけでは解決できません。企業や政府、地域社会が協力した「集団的な行動」が不可欠なのです。

日本のサステナビリティの現状

日本で良い点

食料廃棄の削減

日本は食料廃棄を31%削減するという目覚ましい成果を上げています。これは責任ある生産と消費において、非常に重要な貢献です。

教育と健康の充実

東アジア地域では医療サービスへのアクセスが非常に高く、熟練した医療従事者による出産介助率は96%に達しています。心臓病やがんなどの病気による死亡リスクも減少傾向にあります。

充実したインフラ

電力へのアクセスはほぼ100%で、インターネット利用率も95%以上と高い水準です。研究開発への投資も積極的で、技術革新を促進しています。

日本が抱える課題

電子廃棄物(E-waste)の増加

先進国では一人当たりの電子廃棄物発生量が非常に多く、2022年には世界全体で一人当たり平均7.8キログラムが発生しました。しかし、持続可能な方法で回収・管理されているのはわずか22%に過ぎません。

水産資源の持続可能性

北西太平洋地域では、2019年に魚の資源の45%が生物学的に持続不可能なレベルまで乱獲されており、日本の漁業にも影響しています。

今日から始められるサステナブルな行動

1. 「消費を減らす」が最も大切な一歩

本当に必要かを問いかける

何かを購入する前に「本当に自分にとって必要か?」と問いかけてみましょう。新しいものを買うのではなく、今持っているものを大切に使ったり、修理して長く使ったり、レンタルしたりといった選択肢も検討できます。「より環境に優しい製品を選ぶ」ことも大切ですが、それ以上に「全体的な消費量そのものを減らす」ことが、地球への負荷を最も効果的に低減する方法です。

エネルギーの節約

シャワーの時間を短くする、使っていない部屋の電気を消す、暖房や冷房の設定温度を見直すなど、日常生活での電気や水の無駄遣いをなくしましょう。これは地球の資源を守るだけでなく、家計の節約にもつながります。

2. 「長く使う、修理する」を習慣に

物を大切にする

物が壊れたらすぐに捨てて新しいものを買うのではなく、修理して使い続けることを検討しましょう。製品を選ぶ際には、修理しやすいものや耐久性の高いものを選ぶ意識も大切です。

リサイクルと再利用

ゴミを減らすために、可能な限りリサイクルや再利用、そして生ゴミの堆肥化を実践しましょう。ただし、「Reduce(減らす)」「Reuse(再利用)」「Recycle(リサイクル)」の優先順位を意識することが重要です。リサイクルできるから、たくさん使っても大丈夫という訳ではないということですね。

3. 「移動」を見直す

公共交通機関や自転車、徒歩の活用

短い距離であれば車を使わずに徒歩や自転車を利用し、長距離移動では公共交通機関を積極的に活用しましょう。温室効果ガスの排出量を減らすことができ、健康維持にもつながります。

4. 「賢い消費者」になる

情報に惑わされない

「グリーン」や「サステナブル」と謳われる製品でも、それが本当に環境に良いのか、「グリーンウォッシング(見せかけのエコ)」ではないかを注意深く見極めることが重要です。製品の原材料調達から製造、流通、使用、廃棄までの「ライフサイクル全体」を考慮した情報を参考にしましょう。

信頼できる認証マークの活用

Fair Trade(フェアトレード)、FSC(森林管理協議会)、MSC(海洋管理協議会)など、信頼できる第三者機関の認証マークがついた製品を選ぶことで、より持続可能な選択ができます。

5. 「声を上げる、参加する」

政治的行動への参加

私たち一人ひとりの消費行動も大切ですが、サステナビリティは政府や企業が関わる大きなシステムの問題でもあります。地域や国レベルで、サステナビリティ目標に沿った政策を支持したり、意見を表明したりすることで、社会全体に大きな変化を生み出せます。

職場や地域社会での行動

職場での持続可能な慣行(ペーパーレス化や省エネの提案)を提案したり、NPOや地域団体に参加したりすることも、集団的な行動の一環です。

続けやすいサステナブル生活のコツ

1. 小さな一歩から始める

サステナビリティで最も大切なのは「消費そのものを減らす」ことです。新しいものを買う前に「本当に必要か?」と問いかける習慣をつけましょう。まずは自分が「これならできそう!」と思える小さな行動から始めて、完璧を目指すのではなく、できることからコツコツと続けることが長続きの秘訣です。

2. 「なぜ」を知る:システム思考で行動のつながりを感じる

自分の行動が地球全体の大きなシステムにどう影響しているかを理解することで、モチベーションを維持できます。私たちが環境に配慮した製品を選ぶ一つひとつの行動が、最終的に生産者の選択に影響を与え、他の消費者の行動にも影響を及ぼすというシステムがあります。

3. 完璧を目指さず、柔軟な姿勢を持つ

サステナブルな選択は時に複雑で、価値観が対立することもあります。「完璧にできないと意味がない」と諦めるのではなく、「何が正しいか」に固執するよりも「しなやかであること」が大切です。失敗は学習の機会だと捉え、一人ひとりの能力は異なることを理解して、お互いに寛容な姿勢でいましょう。

4. 自分だけでなく、みんなで進む意識を持つ

サステナビリティは政府や企業、社会全体が関わる「より大きなシステム」の問題です。「自分一人で地球の持続可能性を確保することはできない」と理解することで、肩の荷が下りるかもしれません。職場での提案や地域活動への参加、政治的なプロセスを通じた政策支持など、消費行動だけでなく多様な形で貢献できます。

5. 学び続け、しなやかに変化する姿勢を大切にする

サステナビリティは一時的な流行ではありません。地球の状況も技術も社会の価値観も常に変化するため、私たちも絶えず学習し、適応し続ける必要があります。新しい情報に耳を傾け、時には自分の行動を見直す柔軟性を持ちましょう。

サステナブルな暮らしが未来にもたらすもの

1. 地球の資源を守り、美しい環境を次世代へ

私たちが消費を減らし、効率的な製品を選び、ゴミを減らすことで、大気や水の汚染が抑制されます。これにより、地球上のあらゆる生命が依存する生態系サービス(食物、きれいな水、気候調整など)が保護され、将来にわたって享受できるようになります。

温室効果ガスの排出量を減らす行動は、地球温暖化の進行を遅らせ、極端な気象現象の頻度や強度を減らすことに貢献します。

2. 未来の世代のニーズを満たす社会を築く

サステナビリティの定義の一つに「将来の世代が自分たちのニーズを満たす能力を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たす開発」があります。現在の私たちの消費行動が、将来の世代が利用できる資源を決定します。サステナブルな暮らしは、地球の資源を未来の子どもたちと公正に分かち合うための基盤を築きます。

3. 社会の回復力を高め、より公平で豊かな社会を育む

地球温暖化による災害や資源不足など、予期せぬ困難が起きた際に、システムが元に戻ったり新しい均衡点を見つけて機能し続ける能力を「レジリエンス(回復力)」と呼びます。サステナブルな暮らしは、社会全体のレジリエンスを高め、よりしなやかに変化に対応できる力を養います。

また、環境問題は社会的に疎外されたグループに不均衡な影響を与えることが多いため、サステナブルな社会は誰一人取り残さない公正で平和な社会を目指します。

4. 経済の持続可能性と新しい価値の創造

エネルギーや水の節約、物の修理や再利用は家計の節約につながります。企業レベルでは、効率的な資源利用がコスト削減と財務的持続可能性を高めます。

サステナビリティへの意識が高まることで、環境に配慮した製品やサービス、修理しやすいデザインなど、新しいイノベーションが生まれます。これは社会や環境に良い影響を与える新しいビジネスモデルの発展にもつながります。

さいごに

「サステナビリティって難しい」と思うかもしれませんが、悲観的になる必要はありません。私たちの行動は「より良く続けるための旅」であり、失敗や損失は学びの機会として捉えることができます。

一人ひとりの小さな選択が、より大きなシステム全体の変化を促し、地球と私たち、そして未来の世代にとって持続可能な、希望に満ちた未来を創造する力となるのです。

今日からできる小さな一歩を、楽しみながら踏み出してみましょう。そして、周りの人たちと協力し、共に学び続ける姿勢が、持続可能な未来への道を開く鍵となるでしょう。

参考文献・出典

この記事は以下の信頼できる資料に基づいて作成されています:

学術書籍・専門書

  • Caradonna, Jeremy. Sustainability: A Historical and Contemporary Briefing
  • Thompson, Paul B., and Patricia E. Norris. 2021. Sustainability: What Everyone Needs to Know. Oxford: Oxford University Press
  • D’Amato, Dalia, Anne Toppinen, and Robert Kozak, eds. 2023. The Role of Business in Global Sustainability Transformations. Routledge Research in Sustainability and Business. Abingdon, Oxon; New York: Routledge

国際機関レポート

  • United Nations. The Sustainable Development Goals Report 2019
  • United Nations. The Sustainable Development Goals Report 2022
  • United Nations. The Sustainable Development Goals Report 2023
  • United Nations. The Sustainable Development Goals Report 2024
  • United Nations. The Sustainable Development Goals Report 2025
  • World Bank Group. World Bank 2023: Evolution, Challenges, and Sustainable Development

政府機関・専門機関資料

  • Environmental Protection Agency. 2024. “EPA Sustainability Initiatives: A Detailed Briefing.” October 26, 2024
  • Private Law’s Role in Environmental Sustainability. 2023. Excerpts from Routledge Handbook of Private Law and Sustainability. October 26, 2023

専門講演・資料

  • Hjalsted, Anjila. “Defining Sustainability: Absolutely.” TEDxGoodenoughCollege
  • Hjalsted, Anjila. “Absolut bæredygtighed – Rockwool Case.” Handout/Briefing Document

この記事の内容は、これらの学術的・専門的資料に基づいており、サステナビリティに関する最新の研究成果と国際的な取り組み状況を反映しています。

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