サステナブルな生活への関心が、ここ数年で急速に高まっている。より良い未来のために生活を見直そうとする人々が増えているのを目の当たりにしている。サステナブルな生活とは、環境や社会に悪影響を与える習慣を見直し、より良い行動に変えていくことである。
ここ数年、私たちの生活がいかに地球に負荷をかけているかを実感するようになった。大量消費・大量廃棄の生活で土地はゴミで溢れ、飛行機や船、自動車による移動や輸送で二酸化炭素の排出量は増加している。年々激しくなる気候変動に、私たちはついていくのがやっとの状況だ。
そこで私も生活を少しずつ変えてみることにした。まずはゴミを減らし、中古品を積極的に購入するようになった。食材は量り売りで買うようにし、生ゴミは家庭でコンポストで堆肥にしている。
しかし、この世界をより良くするためにやるべきことはまだまだたくさんある。どの行動が本当にサステナブルな未来につながるのか分からず、立ち止まってしまうこともある。雇用を増やすためにエシカルな商品を買うべきか、それとも今あるものを使い続けるべきか。海外産のオーガニック食品とオーガニックではないけど地産食品、どちらを選ぶべきか。
こうした問いに明確な答えはない。世界は複雑に絡み合った問題で成り立っている。選択を間違えることもあるが、大切なのは試行錯誤を続け、学び続けることだと思う。
あなたもこの文章を読みながら考えてほしい。今、私たちが直面している課題は何か。未来の世代により良い世界を残すために、自分にできることは何か。
持続可能性を考える4つの視点
サステナブルな行動を考えるとき、私は4つの分野に分けて整理している。環境保全、経済発展、社会正義、人間開発である。
それぞれの分野で、現在の私たちの行動がどのような問題を引き起こしているかを考え、理想とする未来の姿を描いてみてほしい。
環境保全
最近、地球環境の変化を肌で感じる。毎年のように異常気象が起こり、日本の夏は外出すらままならないほど暑くなった。
これらはすべて、化石燃料に依存し、大量消費を前提とした経済システムが原因だ。資源を使い尽くし、最後はゴミとして捨てる。埋立地には衣類、靴、バッグ、電子機器などありとあらゆるものが積み上げられている。
海に目を向けると、どこに行ってもプラスチックゴミが浮いている。プラスチックストローが刺さったウミガメの映像は、多くの人の記憶に残っているだろう。
私たちの生活が環境に与える悪影響は、ここでは書ききれないほどたくさんある。
自分の行動が環境にどんな影響を与えるのか、もっと意識を向けることができると思う。私たちは地球の生態系の一部なのだから、住んでいる環境を大切にしたい。
経済発展
私たちの生活水準は確実に向上していると感じる。少なくとも一部の国では、一定の生活水準が確保されている。テレビ、冷蔵庫、スマートフォンなど、生活を豊かにする製品に囲まれ、店には食料品が溢れ、短時間で世界中を移動でき、旅行を楽しむことができる。
しかし環境問題で述べたように、現在の経済システムは自然保護と両立していない。私たちの生活様式が地球を危険にさらしている。
経済的に豊かな国がある一方で、巨額の債務と経済不安に苦しむ国もある。経済的に豊かな国でも格差は広がるばかりで、一部の人が必要以上に富を独占し、ほかの一部の人は毎月ギリギリの生活をしている状態が起こっている。
世界中の人々が安心して幸せに暮らせるよう、富と資源の公平な分配が実現する未来を願っている。そして、大量生産・大量消費に頼らない、資源を有効活用し環境負荷を減らす経済システムへの転換を望んでいる。
社会正義
人種、性別、出身、障害、性的指向、性自認などによる差別のない、より平等な社会の実現を目指している。前進はしているものの、ゴールはまだ遠い。
日本に住む女性として、様々な場面で性差別を感じている。女性は正当に評価されず、男性より低い賃金で働いている。日本には優れた医療制度があるが、避妊薬や中絶費用は高額で、若い女性が利用しにくい状況にある。
同性婚も認められておらず、多くのカップルが法的に家族になることを阻まれている。
正規雇用と非正規雇用の格差拡大も深刻な問題だ。社会保障制度はあるが、本当に必要な人が気軽に利用できる状況ではない。
すべての人にとってより良い社会を作るための取り組みを続けたい。日本で、そして世界中で差別や格差がなくなるような世界を作っていきたい。
人間開発
すべての人が教育、医療、社会保障を受けられる世界を目指している。私はラッキーなことに質の高い教育を受け、知的な挑戦を重ねる機会に恵まれた。外国で生活し、多様な文化を直接体験できたことも幸運だった。
今の時代は、さまざまな情報へ簡単にアクセスできるようになったが、信頼できる情報を見分けることは難しくなった。SNSを長時間見てしまい、貴重な時間を無駄にしてしまう。
インターネットの進化により、情報の利便性や世界中の人々と簡単につながれるようになったのは素晴らしいこと。ただ、ネット上だけの交流ではなく、実際に会う交流の場所はなくなってほしくない。薄っぺらい情報だけでなく、深い分析や建設的な議論の場も大切にしていきたい。
教育費が高額な日本では特に、すべての人が無償で教育を受けられる環境ができるといいと思う。知識と技術へのアクセスを平等にし、全ての人がより良い生活を送れるようにしたい。
持続可能な未来に向けた行動
現在の問題点と理想の未来像を考えたところで、次はどんな行動をするか考えましょう。個人レベルでできることには限りがあるが、自分の手の届く範囲で変化を起こすことはできる。
持続可能な行動の例を考えてみたので、参考にしてみてください。あなた自身の目標に合わせて、行動リストを作りましょう。
環境保全の取り組み
- 地域の清掃活動に参加し、ゴミを減らして自然環境を守る
- リサイクル、コンポスト(堆肥化)、適切なゴミ処理を実践し、埋立地への負荷を減らす
- 節水を心がけ、雨水をガーデニングに活用する
- 使い捨てプラスチックを避け、繰り返し使える製品を選ぶ
- 植樹活動に参加し、生物多様性の保全と気候変動対策に貢献する
- 公共交通機関や自転車、徒歩を利用し、二酸化炭素排出量を削減する
- 持続可能な生活、省エネ、ゼロウェイストに関する勉強会を開催・参加する
- 野生動物保護や在来植物の栽培など、生物多様性保全活動に取り組む
- 畜産業による環境負荷と動物への残酷な扱いを減らすため、肉の消費を控える
経済発展への貢献
- 地元企業や起業家を支援し、地域経済を活性化する
- 再生可能エネルギーや持続可能なインフラ整備に投資・協力する
- 若者や社会的弱者の雇用機会創出に関わる
- 無駄な消費を控え、長く使える製品を選んで資源を有効活用する
- 少ない資源でリサイクル可能な製品・サービスの開発・利用を促進する
- 働きがいのある仕事、公正な賃金、平等な機会を求める政策を支持する
- 地域主体の経済発展プロジェクトに参加・支援する
- 環境に配慮した商品を選び、持続可能な経営を行う企業を応援する
社会正義の実現
- 公正な労働条件と同一労働同一賃金の実現を求める
- 社会的弱者への職業訓練や環境保護プロジェクトの実施・参加
- 意思決定における多様性と包摂性、住民参加を促進する
- 医療、教育、住宅などの基本的ニーズに取り組む団体への協力
- 企業や組織に公正で倫理的な経営を求める
- 持続可能性と公平性を重視する政策を地方・国レベルで推進する
- 特に弱い立場の人々の声が政策に反映される環境を作る
人間開発の推進
- 持続可能性、健康、福祉に関する教育活動に参加する
- 医療サービスが不十分な地域・層への支援に取り組む
- 環境関連の仕事や技術に関する生涯学習・技能開発を促進する
- 持続可能な生活技術を教えるメンター・指導者として活動する
- 年齢・背景を問わず、教育・訓練機会への平等なアクセスを支援する
- 地域の健康・福祉向上の取り組みに参加・協力する