ここ最近、「サステナブル」って言葉をよく耳にするようになりましたよね。学校でもSDGsの取り組みを行っているところもあり、世の中の関心が高まっています。
しかし、「サステナブル」ってどういう意味?と疑問に思う人もいると思います。
この記事ではサステナブルについて、できるだけ簡単に分かりやすく説明します。
サステナブルとは何?
「サステナブル」は英語で「Sustainable」と書きますが、「持続可能」という意味です。英語の発音は「サステイナブル」に近いのですが、日本語では「サステナブル」や「サスティナブル」と書かれています(これ、早く統一してほしい。いつもどっちを使うか迷うところ)。
英語では「持続可能性」という意味で「サステナビリティ(Sustainability)」と使うこともあります。
でも、「持続可能」ってどういう意味?って気になりますよね。「持続可能」とは何かを理解するには、持続可能ではない今の社会の現状を理解する必要があります。
サステナブルの歴史
私たちが「持続可能性」について取り上げるようになったのは、1960〜70年代でした。第二次世界大戦が終わり、経済成長が加速しました。そして、人口も増加したので、天然資源がなくなることが懸念されました。
サステナブルという言葉が初めて使われたのは、1987年の「環境と開発に関する世界委員会 (World Commission on Environment and Development)」でした。委員会に出されたレポートに、サステナブルな開発の必要性が取り上げられました。
Sustainable development is development that meets the needs of the present without compromising the ability of future generations to meet their own needs.
サステナブルな開発は次の世代が不便することなく需要を満たせるように考慮しながら、現在の需要を満たすように開発することである。
ブラントラントレポート, 1987
現在の経済活動や人口増加を考慮すると、「持続可能ではない」と危機感を持つ人がいました。特に先進国の生活は資源を搾取しすぎており、次の世代や同じように資源にアクセスできない貧困に悩む国のことを考えるべきだというのが、サステナブルの始まりでした。
サステナブルの現在
1980年代にサステナブルな運動がありましたが、声は多くの人には届かず、経済成長が続きました。しかし近年、若者の間でサステナブルな運動が盛んになっています。若い活動家のグレタ・トゥーンベリさんなどの影響が大きいですね。
そして近年、40年前に懸念されていた気候変動や地球温暖化の影響を実感する機会が増えました。一部の地域では気温が上がり、水不足が深刻です。一方で台風やハリケーンなどの異常気象の頻度も増えているので、世界的に影響する問題となりました。
海に流れたプラスチックの汚染の映像も、サステナブルな運動への関心を高めます。インターネットやSNSが発展したことで、世界中の情報がすぐに手に入るようになったのも、問題意識が高まった理由だと言えるでしょう。
ファッション業界では、発展途上国で下請け工場の状態が悪く、建物が崩壊して、多くの犠牲者を出したのが衝撃的でした。今まで作る人の労働環境を考えずに安いファストファッションを買っていた人も、自分の買っている商品が離れた場所で労働者の不幸につながっていることを知りました。
SDGsとの違いは?
今は「サステナブル」というとSDGsが思い浮かぶと思います。
SDGsは2015年に国連が掲げた「持続可能な開発目標」です。2030年までに17の目標と169のターゲットの達成を目指し、加盟国は150を超えます。貧困や環境汚染だけではなく、地球温暖化、クリーンエネルギー、教育、ジェンダー平等など、あらゆる分野で持続可能な開発を目指します。
「サステナブルな開発」には、経済、社会、環境の3つの要素のバランスが大切だと掲げられました。
サステナブルというと環境問題が取り上げられますが、社会問題やジェンダー問題もサステナブルな社会の取り組みの大切な一部です。
17の目標
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業の技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさを守ろう
- 平和と公平をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
エコ・エシカルとの違いは?
サステナブルと似たような言葉で、「エコ」と「エシカル」があります。同じような意味ですが、少しニュアンスが違うので、違いを見てみましょう。
「エコ」は英語の「エコロジー(ecology)」を短くした言葉で、「自然環境」や「環境保護」という意味です。サステナブルは環境・人・社会など幅広いジャンルがありますが、「エコ」というと環境への配慮を意識しています。
「エシカル」は英語の「Ethical」から来ており、「倫理的」という意味です。サステナブルはどちらかというと、私たちの住んでいる国や社会のシステムを持続可能にするという意味が強いですが、エシカルは企業や個人の行動に関連しています。社会や環境に配慮した行動を意識するという意味合いが強いです。労働者の労働環境を配慮したフェアトレードはエシカルに含まれる場合が多いです。
サステナブルな取り組みは?
サステナブルな取り組みはたくさんあります。何か一つをすれば、サステナブルになるわけではなく、いろいろな問題が複雑に交わっています。
脱炭素
地球温暖化につながる温室効果ガスを減らす取り組みは世界各国で行われています。英語では「カーボンニュートラル (Carbon Neutral)」と言われています。
石炭や石油などの化石燃料を使用することで、二酸化炭素の排出量が増えました。二酸化炭素はやメタンは温室効果ガスと呼ばれ、大気中の熱を吸収する性質があります。なので、大気中の温室効果ガスが増えると、地球の温度が上昇し、地球温暖化につながります。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にすることです。「実質ゼロ」にすることは、排出をゼロにするのではなく、地球が吸収できる量まで抑えるという意味です。森林や海は二酸化炭素を吸収する力を持っているので、植木をしたり森林を守る活動は脱炭素につながります。海も二酸化炭素を吸収する力がありますが、水中の二酸化炭素の量が増えることで、魚やサンゴなどの海洋生態系への影響が懸念されています。
電気会社は太陽光・風力・水力などの再生可能エネルギーへの転換を進めています。温室効果ガスを出さないでエネルギー供給できる方法にシフトしています。自動車会社も電気自動車の開発を進めており、車による二酸化炭素の排出を減らそうと取り組んでいます。
サーキュラーエコノミー
サステナブルな取り組みで大事なのは、サーキュラーエコノミー (Circular Economy)です。サーキュラーエコノミーとは、循環型経済という意味で、資源のリサイクルや修理サービスなどが含まれます。
現在の経済モデルは、大量生産・大量消費・大量廃棄がベースとなっています。大量の商品を作り、消費者にたくさん買ってもらうことで売上を上げています。しかし物を買う頻度が増えると、廃棄される物の量も増えます。先進国ではゴミの埋立地では処理できない量のゴミが発生し、他国にゴミの輸出をしている状態です。
物を作るには資源も必要ですが、資源を確保するにも環境負担がかかります。作物を育てるために農薬が使われたり、電子機器の部品に必要な原材料を確保するのに、自然環境が破壊されます。
プラスチックは軽量で便利ですが、リサイクルがしにくく、処分後に完全に分解されるのに500年はかかると言われています。プラスチックが海に流れることで、マイクロプラスチックとして残ることが懸念されています。プラスチックの使用を減らしていく取り組みも大切です。
これからはリサイクルを前提にした商品作りをすることで、ゴミを減らして、新しい資源が抽出される量を減らす必要があります。リサイクルのほかにも、物を修理して長く使えるようにするサービスもサーキュラーエコノミーの一部です。
オーガニック
農業はサステナブルにとって大切な要素です。食は人にとって必要不可欠ですが、気候変動や地球温暖化によって食物の栽培が脅かされます。気候に左右されやすいのが農業ですが、近年では大量生産も問題になっています。
農薬や化学肥料を大量に使い、広い土地で一つの農作物しか栽培しない方法が主流です。しかし農薬や化学肥料は環境への負担が大きく、土壌や水質の汚染につながります。ミツバチなどの大切な昆虫にも悪影響を及ぼす農薬もあり、最近ではヨーロッパの国で規制されつつあります。
肉や卵も大量生産されるようになり、動物への虐待も問題視されています。大量生産することで、動物の排出物の量が増え、環境汚染にもつながります。そして家畜の餌を育てるために、農薬・化学肥料・遺伝子組み換えを使った作物の栽培が広がっています。森林を伐採して、作物を大量生産するケースもあります。
消費者がオーガニックの有機野菜やアニマルウェルフェアを考慮した肉や卵を買うことも大切ですが、国が農業経営者に資金を出して、オーガニックへの転換を支援することがまず第一です。
労働環境
サステナブルな社会にするには、安全な労働環境を企業や国は提供しなければいけません。適正な賃金を保証して、長時間労働や過酷な労働をなくす必要があります。
残念ながら、生活するために過酷で危険な仕事をせざる得ない人が世界にはいます。私たちが購入する商品の値段を下げるために、世界のどこかで安い賃金で生活に苦しんでいる人がいる現状です。
フェアトレード認証などの労働環境をチェックする機関もあり、遠い国で働く人への配慮をしている企業が分かりやすくなりました。
労働環境において、ジェンダー平等も大切なポイントです。女性がなかなかキャリアを積むのが難しい中、女性にも働きやすい環境を提供している企業はサステナブルと言えるでしょう。経営者が女性の企業も注目したいですね。
ESG投資
今までは売上が伸びそうな企業に投資する人が多かったですが、最近では環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)に力を入れているESG投資が視野に入れられています。欧州や北米の国では、ESG投資への関心が高まっているようで、これから期待できます。
石炭や石油の化学燃料や武器などの環境や社会に害を及ぼす企業への投資をやめたり、取引を中止するダイベストメント(divestment)をする投資家もいます。
ESG投資指数がいいからと言って、サステナブルな企業とは言い難いですが、企業にとって投資は大切な要素なので、サステナブルな企業への投資が増えることはいい影響を与えるでしょう。
森林保護
アマゾンなどの森林伐採が問題になっていますが、森林は空気中の二酸化炭素を吸収する地球の肺とも言われているほど重要な役割を果たしています。森林伐採の原因となるのが、農地を増やすためです。家畜の餌となる大豆や需要の多いコーヒーの木を植えるために、森林が伐採されるケースがあります。
そのほかにも、燃料や材料として使う木材を供給するために森林が伐採されます。伐採するスピードが速くなると、新しい木が成長する前に伐採されるので、二酸化炭素を吸収する量が減ります。
きちんとした森林管理をした木材を使った商品を選んだり、肉やコーヒーの消費を減らすことで、森林保護にもつながります。
ゴミ問題
海にも陸にも大量のゴミが捨てられ、環境汚染が広がっています。問題はゴミの量が多すぎて、処分しきれないこと。リサイクルのシステムがきちんと稼働していないこと。リサイクルしにくい素材が使用されていること。
サーキュラーエコノミーでも書いたように、物を作るときにリサイクルしやすいように考えることが大切になってきます。ゴミの分別をきちんと行い、できる限りリサイクルされるように、個人の行動も大切になります。
ゴミが出ない商品を選んで、ゼロウェイストに取り組むのもいいですね。
サステナブルな暮らしをするには?
サステナブルは、国・自治体・企業が積極的に取り組むべき課題ですが、私たちの日常で身近にできることもあります。サステナブルな暮らしの具体例をいくつか紹介します。
サステナブルな商品を購入する
毎日の生活で使う商品を購入するとき、サステナブルな商品を選ぶようにしましょう。サーキュラーエコノミーに取り組んでいる企業や、労働者に配慮したフェアトレード商品などを購入することで、サステナブルな社会への貢献ができます。
しかしサステナブルな商品は値段が高い場合も多いので、買う余裕がない人は、サステナブルではない商品を購入しないのも方法の一つです。買わないことは無料で誰でもできます。中古の商品を優先して買い物するのも、サステナブルな買い物です。
使い捨てをやめる
使い捨ての袋やカップを使わないようにすることも、私たち個人ができることの一つです。マイバッグやマイボトルを持ち運んで、使い捨ての袋やカップを使わないようにしたり、一回しか使えないラップやジップロックを何回も使える蜜蝋ラップやシリコンバッグに変えるとゴミの量を減らせます。
フードロスを防ぐ
日本でも年間522万トンのまだ食べられる食品が廃棄されています。買い物をするときに全部食べられる分だけ購入したり、賞味期限が近いものから買うようにすると、フードロスを減らすことができます。
地産地消を心がける
二酸化炭素の排出を減らすためにも、近くで生産された食品や商品を積極的に購入するとサステナブルです。地域貢献にもつながるので、社会にもいい影響を与えます。
サステナブルなファッションを選ぶ
ファッションによる環境汚染が注目されていますが、私たちが購入するときもサステナブルなファッションを選ぶようにしましょう。新品を購入するのではなく、古着を選んだり、リサイクル素材や天然素材を選ぶようにするとサステナブルです。化学繊維を使用した素材は、選択するときにマイクロプラスチックとして水の汚染につながるので、減らすようにしたいですね。
政治に関心を持つ
サステナブルな暮らしをするために、個人にできることもありますが、個人の力には限りがあります。国や自治体がサステナブルに力を入れないと、現状を変えることは難しいです。
一人ひとりが政治に関心を持ち、サステナブルな政策を増やす政治に投票しましょう。実際に政治家に話をしにいって、導入してほしいサステナブルな政策について話してもいいですね。
サステナブルな社会を目指そう!
今回はサステナブルについて話しましたが、いろいろな要素を考慮しなければいけないので、複雑な部分も多いです。サステナブルな商品は海外で生産された物が多く、二酸化炭素の排出が気になったり、リサイクルしやすい素材を選んでも、住んでいる地域でリサイクルするシステムが整っていなかったり、なかなか完璧にサステナブルな選択をするのは難しいです。
サステナブルな取り組みをアピールしながら、実際には行っている取り組みが少ないグリーンウォッシングなども問題視されています。実際にどんな取り組みを行っているのかチェックしてから、判断したいですね。特に大企業には、ちょっとした取り組みではなく、大規模な取り組みをしてほしいところです。
実際にサステナブルなのかチェックするのに便利なのが、第三者機関が判断する認証です。フェアトレード認証や、社会や環境に配慮した公益性の高い企業に与えられるB Corp認証などを取得している企業は信頼できます。
みなさんもサステナブルな社会を作るために、まずは自分にできることから始めましょう。