生きる意味とは?生きる意味なんてないと決める前に考えること

生きる意味とは何か?生きる意味はないから考える必要がないというアドバイスが多いが、哲学的に生きる意味を考えてみませんか。

生きていると「毎日が辛い」「朝ベッドから出るのが嫌」「疲れすぎていて、毎日が楽しくない」と思うときがあると思う。そういうときに人は生きる意味について考える。生きる意味を見つけて、充実した毎日を過ごしたいと思うのだろう。

一方で、生きる意味なんてないから、考える必要がないというアドバイスもよく見かける。生きる意味を探すより、自分の幸せを優先したり、楽しく生きる方法を見つけたほうが充実した人生が送れる。もちろん生きる意味はないという意見にも一論あるけれど、100%ないとは言い切れない。

今回は生きる意味に関する哲学的な視点を紹介します。哲学では生きる意味についてはあまり取り上げられないトピックですが、生きる意味なんてないと結論を出す前に読んでほしい。

生きる意味なんてない

生きる意味について話すときに、「生きる意味はない」と断言することがある。簡単に答えが出ない問いだからこそ、生きる意味はないという結論に辿り着くのかもしれない。生きる意味がないという理由は大きく分けると2つある。

人間の人生なんてちっぽけなもの

人は今では長生きできるようになり、80歳くらいまで生きる人の割合が増えている。今の地球では人間の行動によって支配されていると言っても過言ではない。しかし地球の何千億年の歴史や広い宇宙を思い浮かべると、人間の存在なんて小さなもの。人間一人が大きな影響を与えられるわけがない。なので、人間が生きる意味を探しても見つかるわけがないという結論になる。

どんなに素晴らしいことをしても、どんなに悪いことをしても、人間の影響力には限りがある。そう考えると、人間が生きる意味なんてないんじゃないかと思う。

人は自分の意思で行動していない

哲学で、人に自由意思はあるのかと取り上げられる。どれだけ自分の意思で行動していて、どれだけ環境に影響を受けているのか考えたことはあるだろうか?自分の意思で決めたと思うことでも、実は環境に影響されていることが多い。人の性格や人格によって素晴らしい行動ができると思われているが、実はいい行動ができるかは環境によって大きな影響を受けているという研究もある。自分の意思で行動ができないのなら、生きる意味を見つけても意味がないと言える。

生きる意味を探してみよう

生きる意味なんてないと言い切るのは簡単だが、生きる意味があったとしたらどんな意味があるのだろうと考えてみたい。生きる意味を考えるとき、「超自然主義理論」と「自然主義理論」の2つに分けることができる。神や魂などの自然ではないものの存在を信じるか、それとも自然科学的な発想で意味を考えるかの違いだ。

超自然主義理論

人は昔から神や魂の存在から、生きる意味を見出してきた。宗教的な考えでは、神が人間を創るときに使命を与えると言われている。神から与えられた使命を果たすことが、生きる意味だと言える。自分の存在より大きな力から、自分の生きる意味を授かっていると感じると、何か辛いことがあっても、辛い経験にも意味があると思える。そうやって辛い期間を乗り越えるのもいいだろう。

ほかにも魂は永遠に生きると信じる人は、来世のために正しく生きたいと思う。来世も人間に生まれ変わりたいから、徳を積んでおこうと考えることもできる。

先が見えない世の中で暮らすのが辛い人は、自分よりも大きな超自然的な存在に意味を求めるのもいいかもしれない。

自然主義理論

あまり宗教や神などを信じない人には、自然主義理論が合っている。神や魂の存在を信じなくても、生きる意味を見つけることができる。自然主義理論には「主観主義」と「客観主義」の2つに分かれる。主観主義は自分軸で意味を見つけること。一方で、客観主義は主観主義の批判をしながら、ある程度、客観性がないと本当の意味ではないと言う。

主観主義

主観主義は一人ひとり生きる意味の基準が違うと言う。生きる意味は相対的で、人によって違うだけでなく、長い人生の間、意味が変わることがある。生きる意味を強く持っている人もいれば、あまり生きる意味がない人もいる。人生の中でも、生きる意味がある期間とあまりない期間がある。

大切なのは、自分の本質に忠実になり、ほかの人と比べないこと。自分の人生の中で今しなくてはいけないことを見出せばいい。何か没頭できることを見つけたり、朝ベッドから出る理由を探すという意味で、あまりハードルが高くなく、私たちが日常で考える「生きる意味」に近い。

客観主義

生きる意味は人によって違うと主観主義は語るが、だからと言ってどんなものでも生きる意味になるとは言えない。主観的に考えれば、年を取っても髪の毛がたくさん残るように努力する目標も立派な生きる意味になる。しかし、本当にどんな目標でも生きる意味になるのかと言われると、直感的に違うような気がする。ある程度、客観的に価値のあることでないと、本当の生きる意味だとは言えない。

すべての人が納得するような生きる意味は存在しないかもしれないけど、「これをやり遂げたこの人はすごい!」と評価することがある。そういう人は大抵、他人や世界にいい影響を与えていたり、実現できるかわからないような目標に向かって努力していたりする。何か自分自身を超えるものを目指すことに、生きる意味がある。

生きる意味を見つけるためにできること

生きる意味なんてないと断言する前に、生きる意味はあるかもしれないと考えてみよう。生きる意味に近づくためのヒントを紹介する。

生きる意味は幸せになることではない

生きる意味を持てば幸せに暮らせると思ったら、考え直したほうがいい。生きる意味があるから幸せになれるとは限らない。この人は素晴らしいことを成し遂げたと言われる人は、苦しい思いをして成し遂げていることが多い。決して幸せな人生だとは言えないけど、意味のある人生だったと言える。苦しい思いをしてもやり遂げたいものが見つかったら、それは生きる意味だと言えるだろう。

正しいことをしていれば、生きる意味があるとは言えない

正しいことをしたからと言って、意味のある人生になるわけでもない。毎日、倫理的に正しい行動を心がけて生活していても、意味のある人生だとは言えない。生きる意味を持つには、何か勇気を絞って行動する必要がある。常識を覆したり、周りがあたり前だと思っていることに異論したり、社会や他人の人生に何か影響を与えることで意味のある人生になるだろう。

見返りを求めない

生きる意味を見つけて、周りから尊敬されたいと思っていてはいつまで経っても生きる意味は見つからない。見返りがあるから素晴らしい行動をするのではなく、見返りがなくてもその行動自体に意味があると思えないといけない。人間は見返りがあるから行動することが多いが、生きる意味を見つけると見返りを求めなくなる。見返りを求めないと、結果は関係なく行動することで満足できる。生きる意味と幸せになることは同じではないが、見返りを求めないと満足した人生が送れるだろう。

自分自身より大きな何かのために行動する

よく手が届く目標を設定したほうが、効率的に仕事ができると言われているが、生きる意味は手の届かないような目標を設定したほうがいい。自分の人生がよくなることだけに目を向けないで、自分より大きな何かのために人生を捧げる。社会をよくしたり、地球環境をよくするなど、一人の力ではどうにかできる問題ではないけど、行動することに意味がある。苦しんでいる人や動物のためにボジティブな行動を起こしてもいい。充実した人生が送れるだろう。

ライフストーリーを書いてみる

周りから素晴らしいことをしたと尊敬や称賛されなくても、自分が素晴らしいことをしていると思えば、意味のある人生になる。客観的に素晴らしいことをするのは大切かもしれないけれど、自分の本質に忠実にならないとただ他人の評価ばかり気にしている人生となってしまう。生きる意味がわからなくなったとき、自分のライフストーリーを書いてみるといい。

苦しい期間を乗り越えて、何か大きな目標やゴールを目指す。実現できないかもしれないけど、貢献できていると思うことで生きる意味が見つかるかもしれない。周りには理解されないかもしれないけど、結果的に自分が何を信じるかが大切。他人が描く自分のストーリーではなく、自分で自分のストーリーを作り上げることで、自分のストーリーを取り戻そう。

吟味されない人生は、生きる価値はない

プラトンが書いた著書でソクラテスは「The unexamined life is not worth living(吟味されない人生は、生きる価値はない)」と言っている。何も考えないで生活するような人生には価値がないと言う意味だ。古代ギリシャの哲学者のように毎日哲学について考えるまでしなくても、「生きる意味は何か?」と問いだすこと自体に意義があるように感じる。

特に気候変動による災害が増えている今、これからの人間の生き方について真面目に考える必要があるとWendy Lynne Leeという哲学の教授は言う。毎日食べる物や移動手段、お店で買う物など、何も考えないで今まで通りに生活すればいいと言うわけにはいかない。資源は無限にあるかのように、新しい資源を探すのではなく、こんなにたくさんの資源が必要な今の生活を見直すことが必要だろう。

裕福なのに生きづらい社会や、まだ未だに根強く残っている性差別や人種差別。そんな社会を見直して、生きる意味を見つけるのもいいかもしれない。

当たり前なことを常識だと思って受け入れるのではなく、一つひとつ問い出して考える。生きる意味について、みんなが納得するような答えはないかもしれないが、考えることでソクラテスが言うように生きる価値のある人生になるのではないかと思う。

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